【スズキ GSX-S1000GX 試乗】これはアドベンチャーか、スーパースポーツか? “翼”を得たスズキの異端児…伊丹孝裕

スズキ GSX-S1000GX
スズキ GSX-S1000GX全 47 枚

スズキが“スポーツクロスオーバー”や“グランドクロスオーバー”と呼ぶ、新たなコンセプトのモデルが『GSX-S1000GX』だ。スポーツツアラーの運動性とアドベンチャーの快適性を兼ね備えた、その乗り味を夏のワインディングで堪能した。

【詳細画像】スズキ GSX-S1000GX

◆「ウイングレット」を装着した最新2026年モデル

GSX-S1000GXは、2024年に登場した。クロスオーバーとは様々なカテゴリーの、様々な特性を併せ持つことを意味し、ビッグネイキッドの『GSX-S1000』をベースに発展。『GSX-S1000GT』のスポーツ性に、『Vストローム1050』の旅要素を加えた多目的モデルといったところだ。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

そんなGSX-S1000GXが2026年型になり、いくつかの改良が加えられた。エンジンの環境対応が主たる内容だが、外観上の大きな変化(なのにスズキはさほど声高にアピールしていないのだが)は、フロントカウルの両サイドにウイングレットが装着されたことだ。

走行中のダウンフォースを狙ったそれは、直進安定性の向上とフロントリフトの抑制に寄与。カテゴリーを股にかける多用途性の中に、スーパースポーツのフラッグシップ『GSX-R1000R』の空力性能が追加されたイメージだ。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

全長2150mm、軸間距離1470mm、最低地上高155mm、装備重量232kg。これらの数値は、いずれもGSX-S1000GTとVストローム1050の中間にある。決して小柄でも軽量でもなく、前後サスペンションのトラベル量が長めに確保されていることもあって、体躯はかなり立派に見える。

加えて、顔つきは平和主義というよりははっきりと好戦的なため、少なからず手強さを感じさせる佇まいながら、いざ車体をまたげば印象は大きく変化する。830mmのシート高は特に高い部類ではなく、しかも太ももの内側に触れる部分がスリムなため、足の上げ下げのしやすさも足つき性も見た目よりずっと良好だ。

◆フレンドリーさと、スーパースポーツのような高揚感・緊張感

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

体にすぐ馴染む感覚は、走り出してからも続く。スズキ車の多くが採用し、すっかりお馴染みになったローRPMアシストの他、電子制御スロットルのナチュラルな開け口、直4エンジンのスムーズな吹け上がり、軽いクラッチレバーの効果などが合わさり、アンバランスになりがちな極低速域でもスイスイと操ることができる。

ただし、そのまま徹頭徹尾フレンドリーかと言えば、そんなこともない。150ps/11000rpmの最高出力を発揮する998ccの直4エンジンを中高回転域まで回すと、レスポンスとバイブレーションとサウンドが即呼応し、そして焚きつけるように上昇。それに連動して高まる高揚感と緊張感はスーパースポーツのそれに近く、アグレッシブな面もきちんと内包している。

とはいえ、「SDMS-α」と呼ばれるライディングモードを切り替えれば、緊張感を和らげることができる。これには、A/B/Cの3パターンがプリセットされ、スロットルレスポンスとトラクションコントロール(リフトコントロールとロールトルクコントロールも含む)、そしてアクティブダンピングコントロール(サスペンションの減衰力調整)が連動して機能。ごく簡単に違いを記すと、Aが最もシャープな乗り味となり、次いでB、Cの順にマイルドな特性へと変化する。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

このモデルに限らず、スズキ車共通の美点がメーターの見やすさで、その時の車両状態をひと目で把握できる。A→B→Cと切り替えるごとに、TC(トラクションコントロール)の介入レベルが数字で、AD(減衰力)のレベルがH(ハード)、M(ミディアム)、S(ソフト)という文字で変化。選択肢が多過ぎず少な過ぎず、グラフィックやアイコンが明瞭でユーザーインターフェイスにも優れるため、走行中の操作にストレスがない。

また、SDMS-αとは独立して機能するオートマチックサスペンションモードも同様に分かりやすい。こちらはサスペンションのプリロードと減衰力を自動、もしくは任意に強めたり弱めたりできる制御で、一人乗りか二人乗りか、荷物を積載しているかどうかなど、状況と好みによって最適化。その状態もまたメーターを見れば一目瞭然だ。

◆スーパースポーツから乗り換えても違和感のないハンドリング

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

さて、こうした各種制御に託し、あるいは個別にセッティングしながらワインディングを走らせた時の振る舞いはどうかと言えば、基本的にスポーティ方向のキャラクターを持つ。悠々と流すような走りよりも、積極的にスロットルとブレーキレバーへ入力し、着座位置を前後左右に軽く動かすようなライディングスタイルの方がしっくりと、そして生き生きと反応する。

ディメンジョン上、たとえばGSX-S1000GTと比較すると車体前後のピッチングは大きく出るが、言い換えると加減速や荷重の強弱に対するメリハリが分かりやすく、いつの間にか頭を低く構え、体をインに引き込むようなフォームでペースを上げていることに気づく。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

実際、ハンドリングもそれに見合うものだ。リアよりもフロントへの依存度が大きく、今時のスーパースポーツから乗り換えても大きな違和感はない。フロントタイヤから伝わる接地感の高さに、ウイングレットがどれほど貢献しているのかどうかは明言できないものの、その存在とフロントまわりのスタビリティに齟齬はない。

◆絶妙なバランスで成立したユニークな存在

街中での扱いやすさ、高速道路での快適さ、ワインディングでの開けやすさ。これらがバランスしたGSX-S1000GXは、GSX-S1000GTより安楽なポジションで、Vストローム1050より速く楽に移動でき、GSX-R1000Rより気負わずコーナリングを楽しめる。そんなユニークな存在である。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

■5つ星評価
パワーソース ★★★★
ハンドリング ★★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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