7月28日の発売から2週間で受注1000台を突破した『ラッコ』。これまでBYDが日本に導入したモデル中、最速ペースだそう。クルマそのものの仕上がりぶりを考えれば「なるほど」と納得のいく“速報”だった。
◆プレーンなのにシッカリと主張を感じさせるエクステリア
「シンプル、ストレートに軽で1番売れている背の高いスライドドアのど真ん中に入れたのがこの『ラッコ』」とは、開発プロジェクトリーダー・田川博英さんの弁。ただし日産から移籍した田川さんのBYD着任の1年前には、すでにプロトタイプは完成していたのだそう。ちなみにメンバーは日本に滞在、実際に軽自動車がどんな使われ方をしているかの視察、研究を実施したという。
BYD ラッコ
実車は見るからにプレーンなスタイルが何よりの特徴だ。一見ダイハツ『タント』やホンダ『N-BOX』に似ているか?と思えるが、コネコネとディテールや加飾に凝らずともシッカリと主張を感じさせる外観は潔く気持ちがよく、(ルーフは個人差があるが)洗車も相当にやりやすいはずだ。
前後のランプまわりもサラッと先進感がある。さり気なく大人びたデザインと塗色のアルミホイールも落ち着いている。ちなみに全高は1800mmちょうどで、これはホンダ『N-BOX』の1790mm(FF)とほぼ同じ、2520mmのホイールベースは奇しくも(?)同一だ。
◆初めて乗っても安心感があるインテリア
BYD ラッコインテリアも初めて乗っても安心感がある。インパネは専用設計らしく、内部構造の制約を受けずに各機能が無理なくスマートに配置されている。シンプルなグラフィックのメーターは見やすいし、握りやすいシフトレバーも備わる。物理ボタンの操作感もよいところなど、質感にもこだわりを感じる。
質感といえばシートの高密度な着座感もよく、それは軽というよりBYDの上級モデルと同じ基準で仕上げられているのでは?と感じる。「300」以上であればステアリングヒーター、シートヒーター、「300 Premium」なら運転席パワーシート、アラウンドビューなどが備わるのが嬉しい。足を浮かせてスワイプせずとも丸い光に足をかざせば機能してスライドドアが開けられる仕組みは、年配の人には大助かりなはずだ。
BYD ラッコ後席は“N-BOX方式”でチップアップとダイブダウンが可能。機能は踏まえているので、操作性(自重のあるシートを持ち上げる際のやりやすさや、操作に使うストラップ類のわかりやすさ)が洗練されればなお可だ。
◆既存の軽自動車のレベルを超えたしっとりとしなやかな乗り味
そして驚かされたのが乗り味のよさ。今回は試乗会場近くの富士スピードウェイ周辺の一般道をサラッと走った程度だが、とにかく既存の軽自動車のレベルを超えたしっとりとしなやかな乗り味には目を見張るものがある。
BYD ラッコ「SAILON Turismo Comfort CS21」なる中国製タイヤ(サイズは165/65 R15)のノイズの抑え込みやしっかりとした接地感、手応えのあるステアリングの操舵感もよく、ポテンシャルが高そうな足回りと剛性感タップリのボディとのコンビネーション、スーパーハイトワゴンながらバッテリーの重さを使ったフラットな乗り心地、低重心感も印象的だ。
動力性能は強烈な加速をひけらかすタイプではないが、BEVらしくあくまでもスムースで、これも乗り味に見合っている。300 Premiumの一充電走行距離はカタログ数値で320kmと立派なものだが、果たして日常使いでの実用性がどうかは、改めて借り出して確かめたい。
BYD ラッコ■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。




