◆やっぱりVツインがいい
Vツインの鼓動が心地いい。そして、アクセルを開ければ、心地よいトラクションで路面を捉え、スムーズに加速していく。コーナーをひとつ、またひとつと駆け抜けるたびに、「あぁ、これよ、これっ!」と思わず叫びたくなる。
おかえり『SV650』! いや、少し気が早いか。スズキの名機645cc Vツインが、クロスオーバーになって帰ってきた。スズキの新型クロスオーバーモデル『SV-7GX』だ。
ハンドリングは軽快。Vツインならではのコンパクトなエンジンレイアウトが生み出す、すばしっこさは健在だ。そこに快適性を加え、走りの楽しさをロングライドへと広げている。
◆名機がクロスオーバーで復活
スズキ SV-7GX
10月13日に発売されたばかりのニューモデルに、いち早く乗ってみると、長年愛されてきた名機の魅力が、今の時代にふさわしい姿で息づいていることがわかる。
不等間隔爆発が生み出す独特の鼓動。そして、路面をしっかり捉えるトラクション性能。並列2気筒エンジンでも270度位相クランクを採用するなど、各メーカーがこのフィーリングを追い求めていることからも、その魅力は明らかだろう。
それでも、正直に言ってしまう。やっぱりVツインがいい!
そんな声を、ユーザーや販売店からも耳にしてきた。というのも、SV650はいつの間にかスズキの公式ホームページで「生産終了」となっていたのだ。
最初にそれを見たときは、そりゃないぜ……と思った。
スズキ SV650(参考画像)645ccの水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、1999年の登場以来、長きにわたって支持されてきたSV650シリーズ。そのスムーズな出力特性と力強いトルクは、ビギナーからベテランまで幅広いライダーを魅了してきた。
大排気量モデルに比べれば、ミドルクラスはどうしても地味に映るかもしれない。しかし、大きさやスペックを競うのではなく、乗り手にとって本当に扱いやすく、走ることそのものを楽しめるバイクを選ぶ。そんな玄人好みの世界が、ここにはある。
だからこそ、SV650の行方を気にしていたファンは少なくなかったはずだ。そして今回、その名機をルーツとするSV-7GXが登場した。電子制御スロットルを採用し、クロスオーバーモデルとして生まれ変わったのだから嬉しいではないか。
◆街乗りも旅もこれ1台
スズキ SV-7GXSV-7GXのチーフエンジニア加藤幸生(スズキ二輪商品企画部 二輪第2カーライン)さんは、「これがスタンダードになるかもしれない」と話す。それほどに、手応えを感じているのだ。
クルマの世界では、実用性と機能性を兼ね備えたSUVが主流になった。ならばバイクも、幅広い用途に対応できるクロスオーバーモデルが支持されるのではないか。加藤さんの言葉には、そんな思いが込められている。
筆者も同感だ。ライダーの視線が高く、ゆったりとした姿勢で乗れるうえ、街なかから高速道路、ワインディングまで幅広くこなせる。
日常の移動からロングツーリングまで、1台でさまざまな楽しみ方ができる万能性こそ、クロスオーバーモデルの魅力であり、幅広いライダーに支持される理由なのだろう。
◆電子制御搭載で安心感を増した
スズキ SV-7GXSV650からスチール製トレリスフレームを受け継ぎながら、各部を専用設計。サスペンションやハンドルバーなどを見直し、アップライトでリラックスできるライディングポジションを実現している。
実際にまたがると、ハンドルが自然に手元へ収まり、窮屈さがない。視線も高く、先の状況を把握しやすい。車体を左右に切り返す動作も軽快で、Uターンのような小回りも気負わずにこなせた。
この扱いやすさは、街乗りで大きな武器になる。それでいてワインディングでは、Vツインの持ち味が存分に発揮される。コーナーの立ち上がりで後輪が路面を捉え、車体がスムーズに加速していく。安心してアクセルを開けていけるから、走る楽しさも自然と高まる。
スズキ SV-7GX電子制御スロットルの採用によって、スズキドライブモードセレクター(SDMS)やトラクションコントロール、双方向クイックシフトシステムも備わった。
クイックシフトシステムは、クラッチレバーを操作せずにシフトアップ/ダウンが可能。スロットルのオン・オフを問わず変速できるため、ツーリングでの疲労を軽減してくれるだけでなく、スポーツライディングではリズミカルな走りを後押ししてくれる。
◆ロングライドへ誘う本格装備
スズキ SV-7GXハーフカウルは風洞試験のデータをもとに設計され、ライダーの周囲を流れる空気を整える。ウインドスクリーンは50mmの範囲で高さを3段階に調整でき、体格やヘルメット、走行状況に合わせたセッティングが可能だ。
さらに、ナックルカバーも標準装備。手元に当たる走行風や風雨を和らげてくれているのがわかった。
Vツインはエンジンがスリムで、並列2気筒モデルに比べて前面投影面積を抑えやすいという利点もある。こうしたパッケージングのよさを生かしながら防風性能を高めている。軽快さを犠牲にすることなく、長距離移動での快適性を高めているのは嬉しい。
シート高は795mm。燃料タンクからシートにかけて絞り込まれた形状と、スリムなサイドカバーによって、停車時の足つきにも配慮されている。
スズキ SV-7GX
スズキ SV-7GXSV650に対してクッションを10mm厚くし、形状も見直すことで、座面にかかる圧力を低減。パッセンジャー用もクッションを20mm厚くした。
純正アクセサリーのコンフォートシートにも座らせてもらった。着座面が約25mm高くなるため、足つきには影響するものの、膝の曲がりが緩やかになり、ゆったりとした姿勢を取りやすい。身長175cmの筆者なら、こちらを検討する価値がありそうだ。
純正アクセサリーには、標準スクリーンより80mm高いツーリングスクリーンも用意される。ライダーの体格や好みに応じて組み合わせを選べるあたりも、さすがはスズキ。旅の道具としての完成度を高めている。
◆ユーザーの使い方を熟知する開発陣
スズキ SV-7GX標準装備のリヤキャリアも見逃せない。リヤシートとキャリアの上面がフラットにつながるように設計されているため、大きな荷物を積みやすい。ラゲッジフックも使いやすい位置に配置され、ツーリングバッグなどを固定する際に重宝する。
オプション設定のトップケースを装着して、積載性を高めることもできるが、ケースを外した状態でも荷物を載せやすい。実際に旅へ出るライダーの使い方を、開発陣はきちんと考えている。
サスペンションは、快適性とスポーツ性のバランスを追求した専用設計。フロントにはストローク量125mmの正立フォーク、リヤにはホイールトラベル129mmのリンク式モノショックを採用している。
スズキ SV-7GX数値だけを見ると、クロスオーバーモデルとしてはストロークが少なめに思えるかもしれない。ところが実際に走らせると、サスペンションはしなやかに動き、必要なところではしっかり踏ん張ってくれた。
舗装路の継ぎ目や荒れた路面でも落ち着いた乗り味を保ち、未舗装路へ足を踏み入れても不安は少ない。もちろん、本格的なオフロード走行を目的としたモデルではないが、旅先で舗装が途切れたときにも、過度に身構えずに進んでいけるだろう。
リヤサスペンションには7段階のプリロード調整機構を備え、タンデム走行や荷物の量に応じてセッティングを変更できる。
スズキ SV-7GX足まわりは前後17インチで、タイヤはピレリ『ANGEL GT II』。グリップ性能、操縦安定性、耐摩耗性のバランスに優れ、さまざまな路面状況で安定したハンドリングを支えてくれる。
軽快なハンドリングと、しなやかな足まわり。そこに防風性や積載性まで加わるのだから、日常からロングツーリングまで、活躍の場はかなり広い。
◆垢抜けすぎてやしないか!
スズキ SV-7GXスタイリングも印象的だ。『GSX-S1000GX』を思わせる、ダイナミックで流れるようなプロポーション。空力を考慮したレイヤード構造のサイドカウルや、各部のグラフィックが、クロスオーバーモデルらしい存在感を生み出している。
フロントマスクには、ハイビームとロービームをひとつの発光部で切り替えるバイファンクションLEDヘッドランプを採用。左右に配置されたLEDポジションランプと相まって、精悍な表情をつくり出している。
灯火類のデザインも含め、かつてのSV650が持っていたシンプルなネイキッドスポーツの印象とはずいぶん違う。
スズキ SV-7GXメーターは5インチのカラーTFT液晶ディスプレイ。スマートフォンと連携する「SUZUKI RIDE CONNECT+」アプリを利用すれば、ターンバイターン方式のナビゲーションを表示できる。
USB Type-Cソケットも標準装備され、現代のツーリングに必要な利便性がきちんと盛り込まれた。
価格は、ブリリアントホワイト/トリトンブルーメタリック、パールマットグレージュ、グラススパークルブラックが117万7000円。ブリリアントホワイトは113万3000円だ。
スズキ SV-7GX◆SV650の復活を予感させる
ここからは、少しばかり想像を膨らませてみたい。スズキは「GSX-8シリーズ」の登場以来、共通のプラットフォームを生かし、魅力的なモデルを次々と送り出してきた。
ひとつのエンジンや車体構成をベースに、異なるキャラクターを持つマシンを展開する手法は、いまやメーカー各社にとって重要な戦略となっている。
SV650もまた、長い歴史を持つVツインエンジンを核に独自の魅力を築いてきた。生産終了を知り、その行く末が気になっていたところへ登場したのが、このSV-7GXだ。
スズキ SV-7GXに搭載される645cc Vツインエンジン電子制御スロットルを採用し、現代の装備をまとってクロスオーバーへと生まれ変わったこのマシンは、単なる後継車にとどまらない、新たな可能性を感じさせてくれる。
開発陣がユーザーの声に耳を傾け、SV650の魅力を次の時代へつなごうとしているのだとしたら、ファンとしてはうれしい限りだ。
ならば、期待してしまうではないか。電子制御スロットルを得たVツインを使い、さらに異なるキャラクターを持つマシンが登場するのではないか。そんな想像まで膨らんでしまう。
スズキ SV-7GX 開発メンバー。右がチーフエンジニア加藤幸生さんもちろん、現時点でそうした計画が明らかになっているわけではない。それでもSV-7GXに乗れば、645cc Vツインの魅力がいまも十分に通用することを実感できた。
鼓動を味わい、コーナーを軽快に駆け抜け、遠くまで走っていく。気負わずに乗れて、走ればしっかり楽しい。大排気量車の豪快さとはまた違う、ミドルクラスならではの、エンジンを自分の手の内で操る喜びがある。
燃料タンクをSV650より3リットル増やして17リットルに。SV650を愛してきたファンはもちろん、初めて大型バイクを選ぶ人にも、ベテランにも。SV-7GXは幅広いライダーに受け入れられ、きっとまた長く愛され続けるモデルになるに違いない。
スズキ SV-7GX■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。




