95年の日米自動車合意に基づいて年に一度開かれている日米自動車年次協議がバンクーバーで開催され、アメリカ政府は、アメリカ製自動車部品の対日輸出が減少していることについて日本政府に強い懸念を表明した。しかし国内の新車販売が伸び悩むなか、日本側にもアメリカ製部品の輸入拡大に効果的な手だてはなく、自動車部品が日米通商問題の新たな火種になる可能性が高まっている。
年次協議は来年を最後に終了する予定だが、アメリカ側が95年合意の協定内容見直しを求めて協議の継続を求めてくるものと見られている。その際、これまで対日強硬派の急先鋒だったビッグスリーに代わり、部品業界の圧力が強まる可能性が高いと日本政府筋は予想している。
フォード、ダイムラー・クライスラー、GMの完成車メーカーは、アジア地域を含む世界最適生産を進めているものの、米国製完成車の日本への輸出拡大についてはこだわりを急速に失っているという。日本国内での生産さえも検討しているなかで、これまでのように単純な構図に従っただけの対日批判は意味をなさないというわけだ。
他方、アメリカの部品業界は「対日自動車部品公正貿易法」が2003年まで延長されたことを受けて、このところ政府への働きかけを強めている。部品業界の圧力により米議会が再び日本批判の調子を強めれば、議会との関係維持に慎重な米政府としては日本に新たな要求を突きつけざるを得ない。
日本の政府筋は日米間の通商問題について「運命のようなもの。必ず何か材料を見つけて仕掛けてくる」とみており、自動車問題が再燃する可能性はきわめて現実的だ。