来たる8月22日、「欧米中日における充電インフラ最新トレンド2025」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社富士経済 モビリティ・ソリューション事業部 第一部 ミドルエキスパートである山田賢司氏。
今回のセミナーは以下のテーマで進められる。
1.中国、米国、欧州主要国の公共用充電環境の最新トレンド
2.中国、米国、欧州主要国の基礎充電環境の最新トレンド
3.日本の公共用充電環境の最新トレンド
~EV一台あたりの公共用充電インフラ整備数は世界屈指!?電動車新車販売の低迷が招く、皮肉な途中経過~
4.日本の基礎充電環境の最新トレンド
5.質疑応答
山田氏に、セミナーの見どころを聞いた。
NACSの停滞とその背景
EV充電インフラ市場を長年調査してきた株式会社富士経済 モビリティ・ソリューション事業部 第一部 ミドルエキスパートである山田賢司は、2024年の世界市場を「率直に申しまして、停滞の一年でした」と振り返る。
「事前に期待されていたこととしては、NACSがアメリカでは当然ながら、欧州、それから日本を含むアジアにどう普及してくるのかというところでした。しかしながら、トランプ政権の将来動向の不確実性もあり、本国アメリカでさえ公共の充電インフラとしての設置がほとんど進んでいなかったのです。これはある意味驚きでした」
GMやフォード、さらには日本の主要メーカーも採用を表明したNACS。しかし、政策の先行きが見えない中、充電ポイント事業者(CPO)も自動車メーカーも様子見姿勢を強め、インフラ投資が滞るという想定外の事態に陥った。テスラ自身のスーパーチャージャーの純増ペースも止まっており、サードパーティーによるNACS対応充電器の開発も停滞しているという。
欧州市場も同様に停滞感が漂う。EV販売そのものが低迷したことに加え、「反テスラ」の空気が強く、NACSが普及する動きはほぼ見られなかった。
さらに欧州では、EVを蓄電池として活用するV2Xの計画にも大きな遅れが生じている。EUにおけるデファクト規格「CCS Combo2」におけるDC(直流)方式のV2Xプロファイルの追加は、2024年中の仕様策定が計画されていた。しかしこれが2025年に延期され、最新の情報ではさらに2年後の2027年へと先送りされたという。
「規格策定団体であるCharINに加盟している日系の充電器メーカーから得られた情報によりますと、どうやらヨーロッパ勢はCCS Combo2によるDC V2Xを諦めつつある、という見方まで出ています」
DC V2Xの実現が遠のく中、欧州では新たな動きが生まれている。それは、車両から直接AC(交流)で家庭などに電気を供給する「AC V2X」だ。ヒョンデなどがすでに対応車両を市場に投入しており、ポルトガルやフランス、オランダのユトレヒトといった地域では、このAC V2Xを活用したスマートタウン構想の実証実験が大規模に進んでいる。
ACによる出力は電力が小さくなってしまうため、一台ごとの出力は小さくなる問題があるが、「それを町単位で束ねることで、グリッド全体にも影響力を持つエネルギーリソースとして活用しようという試み」と山田氏は説明する。
一方、他国を圧倒するスケールで突き進むのが中国だ。「数字で見ると、中国が異様なマーケットに育っていることが見て取れます。各国から一桁も二桁も上を行っている状況です」と山田氏は指摘する。
しかし、その背景には特有の事情がある。「中央政府からの補助金により、地方自治体が積極的なインフラ整備を進めてきた」という側面がある。その結果、利用者の利便性を度外視したような場所にも設置され、過去には一度に数百台単位の充電器が撤去されるといった見直しも行われたという。
日本の“特異な”普及率 ― 世界2位の充電密度が示すもの
世界が停滞する中、日本市場は特異な様相を呈している。山田氏がまとめたデータでは、EVとPHEVを合わせたストック車両1台あたりの公共用充電コネクタ数において日本は、調査対象17カ国の中で、ほぼすべての指標で中国に次ぐ2位につけているのだ。
「日本は意外に頑張っているという結果が出ています。しかしこれには理由があります」