【メディアウォッチ座談会】『 CAR STYLING』1999.11号

モータースポーツ/エンタメ 出版物

S 『CAR STYLING』(カースタイリング) は、世界でも数少ない自動車デザインの専門誌です。隔月刊で、文章は日本語と英語で書かれており、海外でも販売されているという、日本にはめずらしい国際的な雑誌です。最新号の1999年11月号(通巻133号)では、フランクフルト・モーターショーを巻頭特集にしています。


『CAR STYLING』(三栄書房刊、税込み価格2300円)

M フランクフルトショーは自動車デザインの最先端が結集するイベントだけあって、23ページもの頁数をさいて紹介しています。さすがに1台あたりの写真点数も多いし、ツェンダーやカルマン、ピニンファリーナなど、他誌ではスペースの都合で紹介できないコンセプトカーまで詳細に紹介しています。

S ただ、 文章はメーカーの広報資料を簡潔にまとめた感じで、たしかにわかりやすいんですが、デザインについての評論や、筆者の意見が少ないのが残念ですね。きれいな本なんですけど、グラフィック誌化しているように思います。

M 同感ですね。たとえば素人目には、BMW『Z9』のデザインは、単なるコケオドシにしか見えないんだけど、「このデザインがなぜ新しいのか」とか「このクルマは、カーデザインの歴史において、どういう意味があるのか」ということを、プロではない一般の読者にもわかるように解説してほしいです。

S それに「デザインの新しさ」を解説するにしても、プロ向けのテクニック論、造型論だけで語るのではなくて「このクルマのデザインは、いまの世の中に対して、どういう提案をしようとしているのか」という、社会的な視点をもった評論をしてほしいと思いますね。

T じつは私は最近まで『CAR STYLING』編集部にいて、この号にも何本か原稿を書いているんですが(笑)、『CAR STYLING』は本来、いま言ったような視点でデザインを評論する啓蒙的な雑誌なんです。最近、そういう論評が減ってしまっているのは、ショーカー自体にも問題があるんです。最近のショーカーは、デザインで何らかの思想を表現しようというよりも、一種のファッション化している傾向が強いんですね。だからハッタリやコケオドシが多くて、真剣に語るべきクルマが減っているんです。たとえばZ9にしても、その派手さや押し出しの強さで、BMWの21世紀のあるべき姿を表現してはいますけど、かつてのZ13コミューターのような社会的な提案はしてないですね。

S それならそうで、もうすこし声高に批判してもいいんじゃないでしょうか。世界的に販売されている、日本では珍しい雑誌なんだし。

M  特集以外では、サターンが新しく発表したミディアムサルーン、Lシリーズのデザイン開発ストーリーを、山口京一さんが解説しています。『CARSTYLING』ならではの企画ですが、サターンLシリーズは日本ではまだ発売されてもいないし、一般の人には感心が薄いんじゃないかな。むしろこのページで取り上げるべきだったのはセリカだと思う。

T たしかにこの企画はプロのデザイナー向けですね。ベクトラと骨格を共有しながら、どうやってサターンらしさを表現するかを解説しているわけですから。ただ私もセリカは取り上げるべきだったと思います。たとえば流面形セリカの登場以降、トヨタ車のデザインが曲線的になったように、トヨタはセリカにおいていつも実験的なデザインをしていますから。この号のようにニューモデルが多い時期だと、どうしても1台当たりに与えられるスペースに限りが出てしまうんですね。

M でも『CAR STYLING』は隔月刊のオピニオン誌なんだから、情報の早さ、多さを追求するより、もっと紹介すべき車種を絞って、より深く解説するほうがいいと思うけど。

S そういう意味では「がんばれインテリアデザイナー」という企画は面白い。この企画では、インテリア・デザインの歴史と振り返るとともに、インテリアをデザインするのに必要な考え方の基礎を解説しています。素人にも分かりやすくて面白かった。

M インテリアはエクステリアにくらべると地味な感じがするけれど、じつは人がいちばん接する部分であって、そのデザインはとても重要なんですね。

T じつを言うと、最近のデザイナーには基礎がわかってない人が多いので(笑)、基礎をイチから教えようということで始まった企画なんです。『CARSTYLING』で唯一、昔のクルマを紹介できるという意味でも貴重なページですね。

S それにしても『CAR STYLING』には、次々と出る新車を1台1台解説するという記事だけでなく、テーマを持った記事をもっとたくさん企画してほしいですね。

M たとえば「なぜ最近のショーカーの色はシルバーが多いのか?」とか「どうして丸いオーバーフェンダー風のホイールアーチが流行るのか?」とか「なぜ最近はアール・デコ風インテリアが多いのか?」とか。教えてもらいたいものです。

T 最近では、スターウォーズとか、ガンダムのデザインを取り上げたりと、新しい企画にも挑戦しているんですが、そうすると評価が二分するんですね。絶賛する読者もいますが、昔からの古い読者も多くて、そういう人からは「クルマ以外のものを載せるな」と苦情がくるんです。「いつまでも変わらない」マンネリ志向が古い読者に好まれているという側面もあるんですね。

M 東京モーターショー関係の記事では、『レガシィB4』ブリッツェンの密着開発ストーリーが面白いですね。ブリッツェンは、レガシィB4をベースに、ポルシェデザインがトータルなドレスアップを行なったというものです。

T これは事前にスバルとポルシェデザインの許可をもらって、最初の企画会議から、じっさいのスタジオでの作業まで、スタッフが密着取材して作ったという企画です。スバルとしては、走り屋兄ちゃん向けではなくて、ドイツのチューニングカーのような、大人向けのスペシャルモデルを目指したそうです。

M ポルシェデザインはポルシェAGとは別会社だけど、レガシィB4自体、ポルシェAGがチューンしたという噂もあった。スバルは否定していたけど。なのにスバルはB4ブリッツェンでポルシェデザインを起用している。これじゃあ噂の火に油を注ぐようなことなるじゃないの?

T だからブリッツェンという名前にして、ポルシェデザインの名前は商品名には使っていないんです、今のところは(笑)。

M しかし、11月号には東京モーターショー関連の記事が他にないというのはさみしいですね。たしかに読者の大半はプロのデザイナーとその予備軍でしょうけど、一般の人には、モーターショーを見に行く前にクルマの知識を得たいという気持ちがあるわけですから。

T 実際のところ人手と時間が足りなくて、そこまで手が回らないんですね。

S それにしても、デザインに興味のある一般の人は多いんだし、コンピューターや家電などでも、デザインが商品の大きな魅力になっている時代です。クルマとインダストリアル・デザインを総合的に紹介、批評する一般向けの雑誌があってもいいと思いますね。『CARSTYLING』の実績とノウハウがあれば、面白い本が作れると思うけれど。

M 三栄書房は、『CAR STYLING Jr.』をぜひ企画してほしいですね(笑)。

S 同感。

座談会メンバー
S:陶山拓(まとめ)
M:三浦和也(auto-ASCII24)
T:高木啓(auto-ASCII24)

《》

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