今回のローバー事業売却は、BMWジャパンにとって最悪のタイミングだった。何しろ2月下旬に全国のBMW・ローバーディーラーを帝国ホテルに集め、BMW・ローバー・ミニ・MG・ランドローバーの5ブランド戦略に沿った販売網再編を通知したばかりだったからだ。
販売網再編はローバーのテコ入れが狙いだった。現在の販売地域(テリトリー)を再分割したうえ、5ブランドをそれぞれ最適配置する内容だ。とはいえ、人気ブランドのBMWは誰もが販売したがり、将来が不安な(その不安は的中したが…)ローバー販売店のなり手がいないのは目に見えている。そこでBMWジャパンは販売地域見直しで出店余地ができるBMWの取り扱いをエサに、ローバー系販売店を新設する心づもりだった。このためBMW系販売店からは「身勝手すぎる」と不満が漏れていた。
しかし親会社のローバー売却で販売網再編の必要性は大幅に後退した。BMWジャパン関係者は「(販売再編は)BMWの戦略としても必要」と強調するが、その一方で「ある程度は見直しも必要」と認める。しかし今は親会社からの指示待ち状態。BMWジャパン社員ですら新聞報道やインターネットでドイツの情勢を知るような状態という。
まさに中間管理職の悲哀といった感じのBMWジャパン。ローバーを押しつけられずに済み、内心喜んでいるBMW販売店は「あれだけディーラー大会で大見えきったBMWジャパンがどんな顔をして説明するか見もの」と皮肉タップリに様子見を決め込み、一部のローバー販売店は「我々はBMWジャパンと契約している」と、BMWジャパンに損失補填を求めることも辞さない構え。
まさにインポーターの指導力、ディーラーからの信頼度が問われる有事なのだが、BMWジャパンは親会社からの公式発表を垂れ流すほかは沈黙を続けている。能力のない中間管理職の見本のように…。