セキュア開発における脅威分析【自動車セキュリティ解説 第2回】

リスクコントロールの重要性

開発者のセキュリティ知識の不足

継続的なリスクの見直し

分析作業の効率

OEM・サプライヤー間の連携

イメージ
イメージ全 6 枚

自動車業界が直面するサイバーセキュリティの課題と対策を取り上げる本シリーズの第1回では、自動車サイバーセキュリティに関する国際基準を取り巻く状況や、各OEMやサプライヤーのセキュリティ対応の現状や課題を整理した。第2回では、自動車サイバーセキュリティに関する国際基準であるUN-R155が担保しようとしている本質と、その実行における課題を取り上げる。

リスクコントロールの重要性

前回も述べたとおり、UN-R155が求めているのは、「合理的に予見し得る車両のセキュリティリスクに対して、OEMによる十分な対策が施されていることの実証」である。実証の起点となるのが、企画・設計フェーズで実施される脅威分析とリスクアセスメント(TARA)と、それに基づくセキュリティゴールおよびセキュリティ要求の定義である。

いずれの活動も、主題はリスクコントロールであり、開発プロセスを通じてリスクの識別・評価と対策を繰り返し行うことで製品に内在するセキュリティリスクを許容可能なレベルに抑えようとするものである。リスクコントロールは、開発完了以降のライフサイクル全体にわたっても継続的に取り組まれる必要がある。また、OEMが車両全体のリスクコントロールを担当する一方で、部品を供給するサプライヤーも自社の開発範囲について、適切に脅威分析・脆弱性分析を実施し、OEMとその結果を連携することで車両のセキュリティ品質に寄与することが求められる。

UN-R155準拠に当たり、これまでOEM・サプライヤー各社は自社の製品や組織にあった分析手順や手法を検討および導入してきた。一方で、現在、企業はこうした脅威分析を定常的な製品ライフサイクル業務の一環として運用するに際して多くの課題に直面している。

本稿では「開発者のセキュリティ知識の不足」「継続的なリスクの見直し」「分析作業の効率」「OEM・サプライヤー間の連携」という4つのテーマにおけるツールやデータベースを活用した仕組み化・自動化などを含む対応のトレンドについて、脅威分析の具体的な進め方にも触れながら解説する。

開発者のセキュリティ知識の不足

脅威分析では、何を守るべきか(資産の識別)、想定される被害は何か(損害シナリオの分析)、損害の原因となるセキュリティ脅威は何か(脅威シナリオの分析)、攻撃者はどのような手段を用いて攻撃を行い(攻撃パスの分析)、リスクはどの程度か(リスク評価)、リスクを低減するための対策は何か(リスク対応判断)といったステップを踏んでサイバーセキュリティゴールを定義する必要がある。

こうした分析を進めるために、開発者は各ステップにおいて図1のとおり、サイバー攻撃やセキュリティ対策に関する知識やスキルを獲得し、かつ、最新の攻撃事例に関する情報収集や検証を通じて、知識を常に最新化することが求められる。

図1:脅威分析の実施作業と開発者に求められる知識やスキル

しかし、脅威分析を担当する開発者の多くはセキュリティの専門家ではないこともあり、セキュリティ知識の継続的な獲得と維持は容易ではないという現状を踏まえ、企業が取り得る対策をいくつか紹介したい。


《PwCコンサルティング合同会社》

アクセスランキング

  1. FJクルーザー が復活へ…トヨタ『ランドクルーザーFJ』最終デザインはこれだ!
  2. なぜ今「ダウンサス」? 車高調より安くて“扱いやすい”注目チューンの実力~カスタムHOW TO~
  3. ポイ活主婦に自動車税の納付の仕方を聞く…キャンペーンで全額還元・ポイントで0円払いもできる!
  4. ランドローバーが『ベイビーディフェンダー』発売ってほんと? これが市販デザインだ!
  5. YURTの『シエンタ』用車中泊キットが大幅アップデート、生産体制見直しで8万円値下げも実現
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【学生向け】人とくるまのテクノロジー展 2025 学生向けブース訪問ツアーを開催…トヨタ、ホンダ、矢崎総業、マーレのブースを訪問
  2. AI家電を車内に搭載!? 日本導入予定の新型EV『PV5』が大胆なコンセプトカーに
  3. AI導入の現状と未来、開発にどう活かすか? エンジニアの声は?…TE Connectivityの独自リポートから見えてきたもの
  4. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
  5. BYDが「軽EV」の日本導入を正式発表、2026年後半に
ランキングをもっと見る