【追悼】ミスターオーディオ評論家、長岡鉄男先生を偲ぶ

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オーディオ評論家の長岡鉄男先生がお亡くなりになりました。

つい数カ月前、2月10日のことでした。最近の純正カーオーディオについて、ぜひとも専門家の評価を聞きたいと思ったオートアスキー24編集部は、丸一日、ミスターオーディオ評論家長岡鉄男先生を輸入車合同試乗会に連れ出しました。

何を隠そう、私も学生時代はアルバイトで買い足した単品コンポでシステムを組み、スピーカーのセッティングをあれこれ試した元オーディオマニア。長岡鉄男といえばその宇宙の中心に存在する神様のような評論家です。

初台のアスキーで編集部員が集合したのが朝の4時、長岡鉄男先生の埼玉県越谷のご自宅への集合が朝の6時、寝不足でまだ夢と現実が区別つかない一日の始まり。しかもその後の神奈川県大磯の試乗会場への往復の車中は、延々と巨匠と語り合うことができた夢のような時間でした。

始めはぎこちなかった我々も、長岡先生が本当に心から“先生”と呼べるような人格者だと知るのに時間はかかりませんでした。渋滞にもまれ、時間はたっぷりありました。調子に乗って、あらゆる質問を巨匠に投げ掛けたように思います。

オーディオのこと、ホームシアターのこと、クルマのこと、自作スピーカーのこと、方舟と呼ばれる専用リスニングルームのこと……、引退宣言し、そして撤回したときの事情や心境についても語ってくれました。最近のオーディオ市場について嘆く場面もありました。我々は専門の自動車市場に置き換えてリアルな話として聞かせていただきました。

長岡先生の語りは、決して威張らないが信念に満ちた歯切れのよさ、お人柄や文章そのものでした。たとえば、「MDの音は最近かなりよくなってきた。(曲によっては)私にもCDの音と聞き分けることができない」とオーディオ評論家が言い切ったことに私は驚きました。

権威に左右されず、心を白くして聴く耳を傾けるという姿勢。自分が聴いたものに対する評価は自分がする。それに何の迷いも不安もない。ささいなことを指摘することは簡単だが、本質を左右しないような重箱の隅をつつくような評論は潔しとしない、という氏の信念がさりげなくもひしひしと伝わってくる言葉の端々。

視聴車5台の試乗を一日でこなしてご自宅に再びたどり着いたのはすっかり暗くなったころでした。にもかかわらず、車中で我々が興味を示した“方舟”を「のぞいてみるかい?」と招いてくださり、そのお言葉に甘えてCDを聴いたり、DVDで映画のワンシーンを見たり、2時間近くもお邪魔してしまいました。少年時代からの夢が現実となった至福の瞬間でした。

「またこんど、ゆっくり遊びにおいで」と、お疲れにもかかわらず我々を見送ってくれた長岡先生。一期一会となってしまいましたが、その高潔なお人柄に触れることができた我々は幸せです。

その後、肺炎で入院されたことも知らず、今日突然、お亡くなりになったことを知って「あんなに元気だったのに……」とただ絶句するばかりでした。

先生のご冥福を、心よりお祈りいたします。

《三浦和也》

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