法律上の人格権が生まれるのはどこ? ヘンな交通事故裁判

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アメリカで風変わりな裁判所判断がマスコミを賑わしている。生まれた子供が重い後遺障害持っていたのは、母親が妊娠中に起こした交通事故が原因だとして、7歳の少女が法的後見人を立てて実母に損害賠償の請求を求めているが、この請求が法的に認められるかを審理してきたフロリダ州の高等裁判所は、これが適法であるとの判断を下したのだ。

原告となったのはマイアミ在住の7歳の少女。この少女は母親の胎内にいるときに交通事故に遭い、腹部を圧迫された結果、重い障害をもって生まれてきた。単独事故のため、相手がいないことから、実母の責任として訴えたというもの。

だが、この裁判にはもうひとつの側面がある。裁判を提起しようと考えたのはこの7歳少女ではなく、被告となっている母親本人なのだ。母親は自分の契約していた保険会社に対して、子供の後遺障害の部分についても保険金の支払いを求めていたが、保険会社は「妊娠中は当該被害者は存在しておらず、母親の一部であるので人格権はなく、よって請求自体が無効である」として、支払いを拒否してきた。

しかし、保険会社の言うところの「人格権」が「生命誕生の際にあると仮定したなら、保険会社の主張こそ無効」だと反論し、法的後見人を用意。事故時すでに他人であったと主張して、対人保険からの保険金支払いを求めた。裁判所としてはまず「生命誕生とはどの段階で、どこから他人として法的に線引きを行い、人格権を認めるのか」という、極めて哲学的な判断を強いられていた。

裁判所では「妊娠初期ならともかく、事故直後に早産で生まれてしまったのだから、すでに生誕可能だったとしてパーソナリティ(人格)があると判断すべき」との結論に達し、事故当時の人格権の存在を認めた。このため、他人として扱われる以上、対人賠償請求が行えるという道が開けたため、7歳少女の後見人は年明けにも保険会社に対して支払請求を求めるものとみられる。

《石田真一》

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