遮断機や警報機の無い踏切で列車にはねられて死亡したのは、踏切を管理する鉄道会社に責任があるとして、4764万円の損害賠償請求を争ってきた裁判で、二審の高松高等裁判所は15日、鉄道会社の責任を一審より重く評価した判決を言い渡した。
この裁判は1999年12月、自転車で自宅近くの遮断機と警報機の無い踏切を渡ろうとしていた当時小学3年生の男子児童が電車にはねられて死亡したというもの。両親がこの踏切を管理する伊予鉄道を相手取り「警報機などの安全設備を設置しなかったのが原因」として、4764万円の損害賠償請求訴訟を行っていた。
これに対して伊予鉄道側は「該当の踏切は農林水産省が管理する農道(=国有地)であり、一民間企業の判断で勝手に施設増強が図れない。ポールを立てると農作業機器の通行ができなくなる。実際に遮断機なしの状態で運用されているのは周知の事実であり、歩行者に注意確認する責任が生じる」と主張してきた。
一審の松山地裁は遺族側の主張を認めつつ、被害者の小学生にも横断の際に注意を怠る過失があったとして、鉄道会社側に1783万円の支払いを認めていたが、両親はこれを不服として控訴していた。
15日の判決で高松高裁の井土正明裁判長は「当該踏切の見通しが悪いことは鉄道会社側も認知しており、ポールを立てることができないにしても何らかの対策を講じることはできた。このことから考えて小学生に一審で判断された7割の過失を容認することはできない」として、一審の倍額に当たる3566万円の支払いを鉄道会社側に命じた。
今回のように道路管理者が農林水産省で、農作業優先のために遮断機が設置できないという踏切は全国にかなりの数があると言われているが、最大の加害者は積極的な対策を許さない行政なのかもしれない。