総務省・中国四国管区行政評価局は11日、国土交通省・中国運輸局に対して、広島、山口、鳥取のバス会社(計19社)に対し、安全運行の徹底や改善指導をするように申し入れを行ったことを明らかにした。同局は今年2月の改正道路運送法の施行(事実上の規制緩和)に伴い、高速路線を運行するバス会社の安全管理体制などの調査を行ったが、その過程で発見された数々の問題点を指摘する内容となっている。
行政評価局によると、今回の調査では広島、山口、鳥取に拠点を持つバス会社19社のうち、高速路線や夜行路線など、長距離の路線を有する12社をピックアップして行われた。当初の目的は改正案施行により新規参入が予測されるため、既存会社による安全運行管理の手順などをチェックするためのものだったが、実際には運行管理上の不手際ばかりが浮上。見過ごすことができない内容だったが、行政評価局にはバス会社を直接指導する資格がないため、中国運輸局に代わりに指導することを求める異例の展開となった。
発見された不手際は、高速道路での最高速度無視が最も多く、常に80km/h以上の制限速度で走る“スピード違反常習”の会社もあった。また、路線免許認可の際に、乗客の途中休憩や乗務員交代のために止まることができるサービスエリア(SA)や、パーキングエリア(PA)は指定されており、天候による運行遅れなど特別な理由がなくてはこれを変更することが許されないのに、運転手の判断で勝手に変更されていたということが発覚。規定の交代より少なくしている(つまり長時間運転する)という、安全上問題のある行為をしていた会社も見つかった。
車両整備面でもシートベルトの整備を怠り、実質的に使えないバスを持っている会社も複数あった。また、非常時に使う発炎筒の使用期限が切れているにも関わらず、それの交換を怠っている会社もあったという。期限切れになってからおよそ1年の間、そのまま運行していたというのだから呆れる。
新規参入する会社の手本となるように、安全管理体制のノウハウを把握するはずの調査で、ずさんな管理の現実が明らかになってしまったのだから行政評価局のショックも大きい。しかし、もっとも打撃を受けているのは報告を受けた運輸局で、こちらは「速度違反は安全上の問題を大きく左右するので、早急に指導したい」とコメントするに留めている。