【放談会2002 Vol. 9】巨大連合GMと日本の3社

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【放談会2002 Vol. 9】巨大連合GMと日本の3社
【放談会2002 Vol. 9】巨大連合GMと日本の3社 全 3 枚 拡大写真

三浦 世界最大の自動車グループであるGMグループには、日本のいすゞ、スズキ、富士重工(スバル)の3社が含まれます。それぞれに特徴のあるメーカーですが、この3社は今後、どのようにGMとかかわってゆくのでしょう。

安田 スズキは軽のトップメーカーで、そのスズキと長年の提携関係にありながらも、さらにGMは富士重工とも手を結んだ。小型車の分野とアジア戦略を強化するほか、富士重工の4WD技術を手に入れるとか、いろいろ思惑はあったはずです。富士重工側も、世界戦略を進める上ではGMの傘の下というのはたしかに有利ですよ。

牧野 すでに富士重工は、GMタイランド製のオペル『ザフィラ』をスバル『トラヴィック』としてOEM供給してもらっている。自前でRVを開発するより、ずっと安上がりです。

牧野 いすゞとGMの関係で言えば、GMフィリピンや英国のべドフォードはGMがサジを投げた生産拠点がありましたが、これをいすゞは立ち直らせた。いすゞにはGMが49%も出資しているけれど、直接ああしろ、こうしろとは言わない。そこがフォード対マツダの関係と決定的に違う部分です。いすゞとGMは、互いに尊敬し合い、しかし主張もはっきりと行い、得意分野をしっかり押さえる、という関係です。もっとも、表に出ない複雑な部分というものもあるとは思いますが。

安田 富士重工とGMの関係も、完全にGMが頭を抑えるというものではありませんよ。GMもスバルというブランドを尊敬し、信頼している。

牧野 GMが官僚的だと言われるのは、社内の意志決定プロセスを指してのことであって、少なくとも日本の3社に対しては官僚的に接しているとは聞いたことがない。

三浦 しかし、スズキと富士重工では一部バッティングしますね。

牧野 本当の狙いは別にあるのかもしれないが、GMから見ればスズキと富士重工は「それぞれの個性」ですよ。それと、GMはGMタイランドで『アルファロメオ156』のKD生産を始めるようですが、オペル、サーブという子会社だけでなくフィアット・グループと手を結んだということは、今後の可能性が確実に広がったと思います。そこに加えてスバル、アメリカでも熱狂的ファンがいるスバルをグループに迎えたのだから、これはおもしろい。

安田 巨大グループというテーマで言うと、かつてダイムラーベンツ・グループと三菱グループが包括的提携をしますとブチ上げた。しかし、結局は両方とも覇権主義のグループだからうまく行かなかった。しかも、両方ともプライドが高い。これから先、三菱自動車がダイムラークライスラーとどうやって行くのかは、いまひとつ見えて来ないのですが、GMと日本の3社の関係は、けして悪くないですよ。

牧野 そうですね。ルノー/日産も行く先には波乱があると思いますが、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車も、不透明な部分が多いですね。

安田 日本市場に限定したとき、三菱自動車がダイムラー化するということが、果たして両社にとってよいことなのか……。

牧野 そういえば、三菱自動車の本社が来年春に品川へ移転しますね。三菱商事と同じビルだそうですが、商事のほうが上層階を使うことになっているとか。そういう部分は「三菱グループ内では商事のほうが序列は上だ」みたいな発想なんでしょうね。組織の三菱、紳士的な会社だとか言われていますが、総合商社なんて、すでに役目を終えた業種だ。自動車なんぞはグループの末席にいる会社、という三菱グループ各社の傲慢さが、三菱自動車の足を引っ張っているように思えるんですよ、私には。銀行、重工、商事が御三家といっても、そんなのは20世紀の話じゃないですか。

安田 たしかに、三菱自動車がダイムラークライスラー化するかどうかのポイントは、三菱グループがどう判断するかにかかっていますよ。

牧野  GMに話題を戻すと、いすゞがGMから開発委託を受けた新しい1tピックアップは、2005年にはおそらく年間70万台くらいの生産規模になるでしょう。それをいすゞとGMがアジアや南米の工場で生産する。両社のオペレーションは、両者の本国を離れたところでこそ活発なのです。いすゞのポーランド工場ではGMグループ向けのディーゼルエンジンがどんどん生産されている。スズキは、GMのシボレーブランドで売るクルマを開発しています。いずれ富士重工もそうなるでしょうね。ことしの夏から生産が始まるスバル・バハなんて、レガシィの後部をピックアップの荷台にしたクルマですから、これをGMブランドで売ると言う線だって考えられます。

安田 いすゞで言えば、再建策である『Vプラン』を予定通りに達成できるかどうかですが、プランの内容そのものはGMも評価しているし、今後の方向はあまり心配ないと考えていいんじゃないでしょうか。

牧野 富士重工は、GMグループとの部品共同購入とか、販売網などの相互乗り入れとか、こちらもアライアンスの効果を出せるような道をいろいろと探ってくるでしょう。結果として商品の競争力が高まればいいわけです。

三浦 巨大グループに属していても、自社の独自性を失わないことが大事ですね。

安田 その意味ではGMグループは見どころがあります。

牧野 グループといっても、日本の3社は独立した会社です。トヨタやホンダのように完全に独立して生きるのも手ですが、自社のポジションを生かせる連合に所属するのも手です。ダイムラークライスラー傘下の三菱。ルノーと連合を組んだ日産。これからは外資と民族系という見方ではなく、『その企業にしかないもの』をどういう方向性で発揮するかを見るべきです。

《レスポンス編集部》

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