石川県金沢市を拠点とする北陸交通、大和タクシー、石川交通、石川近鉄のタクシー4社は、利用の拡大を図るため、4社で使える共通乗車券を発行し、5日夜から使用を開始した。金沢市内の飲食店向けに額面500円のチケットを100枚単位で販売する。
これは、利用客の減少が著しいタクシーの利用を促進させるため、これまでは競い合っていた金沢市内を拠点にする4社が初めて手を結び、実現した。従来からあったタクシーチケットとの最大の違いは、販売先を市内の飲食店に絞ったところにある。飲食店は額面500円(利用金額も500円)のチケットを100枚単位で購入することになるが、購入特典として、これまでは月額5〜10万円近く掛かっていたタクシー車内への広告掲出が無料とした。つまり、広告代相当が値引かれたというわけ。
また、このチケットの二次利用は購入した飲食店側に一任されており、顧客サービスとして割引販売することも、無料で配布することも可能となっている。6月1日の改正道路交通法施行によって酒気帯び運転の罰則が強化されたため、これまではクルマで飲食店を利用していた人たちが寄りつきにくくなり、客足は鈍くなっているという。
警察では6月の法改正以降、繁華街での路上駐車が平均で3〜6割も減っているとしている。つまり、減った分=酒気帯び運転のグレーゾーンに当たるというわけだ。そんな状態だからこそ、何としてでも客足を取り戻そうという飲食店と、利用客を増やしたいタクシー会社、そして捕まりたくないという利用者の思惑が一致した。
飲食店としてはこうしたチケットを用意し、タクシー代の一部をサービスすることで客を取り戻せるし、タクシー会社としても事前に安定した収入を得られるので悪い話ではない。もちろん客にとっても安くタクシーに乗ることができるなら損はない。正に「一石三鳥」だ。
このようなサービスは全国でもあまり例はないというが、はたしてタクシー会社と飲食店、利用者の思惑は一致するのかどうか、全国の都市が見守ることになる。