長野県警は29日、夜間に走行中のクルマが横断している歩行者をはねるという事故の検証を進めた結果、実に8割近くがドライバーの右方向から横断を始めたケースであったことを明らかにした。ヘッドライトは進行方向左側を照らす構造のため、左側から歩行者が横断してきた際には気づきやすいが、右側からの場合は死角になって事故の直前まで全く気がつかないということも多いようだ。
これは長野県警の交通企画課が、昨年1月から今年8月までに県内で起きた夜間における対人死亡事故のデータを調べたことから明らかになった。昨年1年間に横断中の歩行者がクルマにはねられ、死亡した人は35人いるという。このうち、クルマの左側から横断してきた人がはねられたケースは16件なのに対し、右側から横断してきた際には19件となる。この35件から夜間に起きた25件の事故を抜粋して調べると、左側から横断した場合の事故は9件に留まり、16件は右側からの横断であることが明らかになった。
今年はこれまでに11人が夜間の事故で死亡しているが、このうち9人は道路右側から横断を始めたことがすでに判明している。道路左側を照射するというヘッドライトの構造や、暗闇で視界が狭まる夜間は「視界が開けた側(右ハンドル車の場合、左方向)を注視しやすい」という傾向にあり、ドライバーの視界では右側から歩いてきた歩行者が「全く見えていない」ということになってしまう。
実際、事故を起こしたドライバーからの聞き取り調査では、右側から歩行者が横断してきた場合、事故の瞬間まで歩行者の存在に全く気づいていなかったというケースが多く、中には「何か当たった衝撃で初めて気づいた」と証言するドライバーもいた。
また、歩行者側も自分に近い側(右方向)から走ってくるクルマの距離を把握しやすいが、1車線離れた側(左方向)から走ってくるクルマの速度を「見た目より遅い」と錯覚し、横断を始めてしまうケースが実験で明らかになっている。これは人間の視覚認知によるものなので容易に変えることはできず、調査をした交通企画課によれば「速いものだと、自分で条件を定めて気を使うしかない」としており、これができにくくなる高齢者で事故が続出することになっている現状がある。
ドライバー側も「右方向も注視する」という条件付けをするのがベストだとしているが、視覚認知を克服するためには若い頃から意識する必要があり、今後は教習所などにデータを提供し、積極的に意識させる土台を作っていきたいとしている。
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