バスジャック被害の運転手、PTSDでも労災認定---ハードルはまだまだ高い

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厚生労働省・佐賀労働局は9日、2000年5月に発生した高速バス乗っ取り事件の際、このバスを運転していた60歳の元運転手に対し、佐賀労働基準監督署が昨年末までに「PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状がみられる」として労災認定していたことを明らかにした。犯罪被害者に対してPTSDを理由に労災認定が認められた例は、1995年に発生した地下鉄サリン事件など、過去に数例しか存在せず、極めて異例。

この事件は2000年5月3日、佐賀発福岡行きの西鉄(西日本鉄道)高速バスが刃物を持った17歳の少年(当時)に乗っ取られ、5人が死傷したというもの。バスの運転手は警察の強行突入によって少年が逮捕されるまでの15時間30分あまりに渡り、バスの運転を続けながら少年を説得した。

運転手は事件直後から体調を崩して約1年4カ月間休職。バスの運転席に座ると「当時を思い出し、体の震えが止まらない」と訴え、バスへの乗務を断念。現在は西鉄バスの系列会社で窓口業務に就いているという。

2001年10月、休職期間中の治療費と休業補償については佐賀労働基準監督署も労災認定したが、会社側は「現在も精神的に不安定な状態が続いている」という本人と主治医の申告を元にPTSDについても労災であることを認めるよう、2002年1月に追加申請を行ってきた。しかし、労災にはPTSDのような精神的後遺症に関する基準が存在しないため、佐賀労働局では運転手の主治医を含め、複数の精神科医から意見を聞いてきた。

この結果、運転手が現在も抱える症状は「事件に付随したものである」と判断。PTSDについても労災認定すべきとの結論に達し、昨年末までに障害給付することを認定した。

思いがけない事故の発生を起因として、PTSDに陥った被害者の潜在的数はかなり多いとも言われているが、大事件でなければ認定されにくい。

《石田真一》

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