「事故を起こした記憶がない」---老人性痴呆症ドライバーの罪は問えるのか?

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広島県警は25日、痴呆症の疑いがあると診断を受けながらもクルマの運転を行い、心神喪失状態とみられる状態で死亡事故を起こした75歳の男を業務上過失致死の疑いで広島地検に送検したことを明らかにした。男は事故当時の記憶が無いと供述しているが、警察では心神喪失に陥りやすいことを認知していながら運転を続けたことが過失としている。

広島県警・廿日市署の調べによると、この男は昨年11月、国道2号線を自分の所有する軽トラックで走行中、側道から合流してきた別のトラックと接触した。しかし、軽自動車はそのまま赤信号を無視する形で交差点に突っ込み、青信号で道路を横断しようとしていた50歳の女性をはねた。女性は男の軽トラックにはねられた際に転倒し、頭を強打したことが原因で死亡している。

警察の調べに対し、軽トラックを運転していた男は「自分がどうしてここにいるのかわからない」と主張。事故を起こしたことも、自分が現場付近の道路を走行していたことも全く覚えていないと繰り返した。その後の調べで、この男は事故を起こす1カ月ほど前から急激に物忘れが激しくなり、通っていた病院の医師からは老人性痴呆症の疑いがあると診断されていた。事故当時に痴呆の症状が出現していた場合、事故を起こしたことを覚えていないという男の発言を肯定することになるが、一方で痴呆状態は心神喪失とされ、罪を問えなくなる可能性も高い。

警察では慎重に捜査を続けてきたが、痴呆症の診断を受けつつ、そして心神喪失状態が続くことを自覚しながらクルマの運転を続けたこと自体が過失と断定。男を業務上過失致死容疑で書類送検した。

運転ができなくなったと自覚する高齢者が自主的に免許証の返納を行う数は徐々に増えつつあるが、その一方で頑なにクルマの運転を続ける高齢者も多い。日本が高齢社会に向かう中、痴呆症のドライバーがクルマの運転を続けるといったことも珍しくなくなるのかもしれないが、こうした悲劇が続くようであれば、自主返納以外にも「運転はもうできません」と判断する公的な審査が必要になってくるかもしれない。

《石田真一》

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