「減収ないから後遺障害ない」ではない---画期的な判決

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1999年1月に兵庫県津名町内の神戸淡路鳴門自動車道で起きた路線高速バスの横転事故によって、頭にしびれが残るなどの後遺障害が発生していた乗客の女性が後遺障害の認定と、それに伴う逸失利益などを求めた民事訴訟の判決が4日、徳島地裁で行われた。裁判所は女性の訴えをほぼ認め、事故を起こしたバス会社に対して総額4413万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

問題の事故は1999年1月17日の夕方に発生している。津名町中田付近の神戸淡路鳴門自動車道・下り線を走行していた大阪発徳島行きの路線高速バスが、津名一宮インターチェンジ(IC)出口付近で側壁に接触した直後に横転するという事故を起こした。この事故で当時46歳の女性が頭や胸などを強く打って重傷を負い、他の乗客12人も軽いケガをした。

バスは連休の混雑解消のために仕立てられた臨時便で、トイレが付いていない車両だったことから、普段は立ち寄らないサービスエリア(SA)での休憩を行っていた。ところが休憩を行ったSAで乗客1人を積み残していたことが判明、52歳の運転手がこのSAに戻るために津名一宮ICでUターンを試みている最中に事故が起きてしまった。

この事故で重傷を負った女性には、頭にしびれたような感覚が残るなどの後遺障害が発生。バス会社に対して後遺障害の認定と逸失利益を合せ、総額7500万円の支払いを求めていた。

しかしバス会社が契約する保険会社は「後遺障害はない。事故前との収入格差が生じていない状態で職場復帰も果たしており、逸失利益を請求する権利はない」と主張。この部分の支払いを拒否したために民事訴訟で争っていた。

3日に行われた判決で徳島地裁の石垣陽介裁判官は、女性に一定の後遺障害があり、それが日常生活に支障をきたしていることを認めた。また、逸失利益についても「職場復帰は果たしたが、今後昇進などに影響が出る恐れは否定できない。減収が生じなかったからとはいえ、労働能力が失われていないとする判断は適当ではない」とも認定し、バス会社に対して総額4413万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

実際には減収となっていないにもかかわらず、逸失利益が認められるという判決は非常に画期的で、今後は他の裁判でも採用される可能性がある。

《石田真一》

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