警視庁は1日、盗難してきたクルマに事故廃車となった同型車の車台番号を付け、一般の中古車であることを装って海外に不正輸出していたとして、47歳の男を窃盗容疑で逮捕したことを明らかにした。警察では盗難や不正改造の実行犯となった日本人3人と、海外への転売を担当していた外国人4人をすでに逮捕している。
警視庁・捜査3課の調べによると、この男は関東圏の中古車販売店の店頭などからRV車などを盗み出し、別ルートで入手した同型の事故廃車車両の車台番号と入れ替えるなどの手口で、盗難してきたクルマを廃車されたクルマと偽り、海外に不正輸出していたとみられる。
廃車体を入手する担当、販売店からクルマを盗んでくる担当、車台番号の入れ替えを行う担当、海外への売りさばきを行う担当など全ての行程が細分化されていた。廃車体を調達したグループは車種や型式などを盗難担当に連絡するとともに、その車体を引き渡す。盗難担当は「廃車体の詳細をまとめた発注リスト」に従い、該当の車両を盗難。廃車体と盗難車両の2台を施行担当者に引き渡す。施行担当者は車台番号を入れ替えた上でバイヤーに引き渡すといったように、その行程はかなり複雑。
しかもそれぞれの担当者は自分が接触する別行程の担当者は知るものの、例えば盗難担当は改造担当を知ることが無いようになっているなど、機密保持も徹底されていた。全てを知るのは今回逮捕された主犯格の男のみで、末端にいる廃車体の調達担当はここまで大きな組織であることすら知らなかったらしい。
盗んできたクルマは大半が海外に輸出されたものとみられているが、廃車体から回収した車検証と、車台番号が一致しているために税関などでも発覚しにくく、盗難車として摘発されないまま海外に流出していた可能性が高いという。百戦錬磨の税関職員の目をごまかせるほどに車台番号の入れ替え技術が精密だったということでもある。
警察ではこのグループが関東近郊で発生したRV車の連続盗難に関与し、被害台数は500台、被害総額は20億円に達するものとみて、逮捕した8人を厳しく追及し、流通ルートの洗い出しなどを進めていくとしている。