これまで「パソコン向け」として進化してきた無線LANに変化が起きている。
無線LANは、携帯電話・PHSに基地局(アクセスポイント)からのカバーエリアが見通し100m程度と狭い代わりに、ユーザーが自由にアクセスポイントの設置・運用をしてよく、通信スピードが速くて、自前の無線LANを使う分には通信料金もかからない。このためパソコンユーザーを中心にオフィスからホームまでの屋内用途で使われている。
また、一部の通信会社や鉄道会社が、レストランや駅といった施設内で使えるインターネット接続インフラとして無線LANを使った「公衆無線LANアクセス(通称、ホットスポット)」を、有料もしくは無料で提供している。例えばロードサイドでは、阪神高速道路の京橋パーキングエリアや、道の駅「香南の前」「しょうなん」などにも、無料の公衆無線LANアクセス設備が導入されている。
この無線LANがパソコン以外に普及する兆しを見せ始めている。
今年11月10日、国内大手無線LANベンダーであるバッファローが、次世代ホームネットワーク構築のための無線LANトータルソリューション「AirStation One-Touch Secure System(A.O.S.S)」を発表。初めて"家電向け無線LAN"をうちだした。
A.O.S.Sではこれまでの無線LANで必須だった初期設定やセキュリティ設定を、パソコンなしでも簡単に行えるようになる。さらに家電メーカーには、組込用の小型・低消費電力の無線LANモジュールを積極的に提供していくという。
11月27日には、米国最大手の無線LAN機器ベンダーのシスコ・リンクシスが記者発表会を実施。基本はパソコン向けの製品紹介だったが、今後の展望として無線LAN機能搭載のDVDプレーヤーや、インターネット動画配信をテレビで観るための受信装置STBなど、家電品向けの機器を発売する考えを示した。
モバイル機器では、12月2日にNTTドコモが初めて無線LAN機能と第3世代携帯電話機能をデュアルで搭載した「無線LAN内蔵FOMA」の試作機を発表。無線LAN経由でのネット接続のほか、IP電話の発着信機能も備えるという。ただし、今回の試作機はあくまで「企業内無線LAN」(プレスリリース)を想定した法人向け。個人向け携帯電話まで無線LANが内蔵されるのは、ユーザーニーズやビジネスモデルの問題があり、まだ先になりそうだ。
自動車分野では、KDDIやNTTグループで無線LANと携帯電話機能の両方を搭載した通信モジュールの研究が進んでいる。また今年のワイヤレスジャパンでは、モバイルキャストが無線LANユニットを内蔵した自動販売機でクルマ向け公衆無線LANアクセスを構築するという計画した。
今後、家電向け無線LANの本格普及が起きれば、モジュールユニットの進化と低価格化は必至。これはモバイル機器向け無線LANの追い風になるはずだ。