警察が自白誘導? 裁判所は身代わり出頭の事実を認めず

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2001年に群馬県長野原町内で起きた交通事故を発端とする犯人隠避事件について、前橋地裁は4日、被告とされた兄弟に対して「警察の作成した自白調書には任意性に疑いがある」として無罪判決を言い渡した。

事件の発端となった交通事故は2001年4月21日に発生している。群馬県長野原町北軽井沢付近の交差点で、一時停止標識を無視して交差点に進入した乗用車が別のクルマと出会い頭に衝突し、衝突された側のクルマに乗っていた女性2人が重軽傷を負った。

現場に駆けつけた警察官に対しては、当時64歳の男が「私が運転していた」と名乗り出たため、警察ではこの男を当事者として事故処理を行い、業務上過失傷害容疑で書類送検していた。

ところが被害者側から「運転していたのは同乗していた別の人物だ」という訴えが警察に寄せられた。被害者は警察の取り調べに対して「本当に運転していたのは別の人物で、酒に酔った状態で運転していたことが発覚するのを恐れて、同乗者が身代わりに立った」と供述した。

警察では加害者側の2人からも事情を聞いていたが、身代わりの容疑を大筋で認めたため、事故当初に運転者として名乗り出た男を犯人隠避容疑で逮捕。被害者側が「運転していた」と主張する男の弟を業務上過失傷害容疑で書類送検していた。

その後に2人は起訴され、刑事裁判がスタートしたが、この際に2人は揃って容疑事実を否認。逮捕についても「警察官から自供すればすぐに釈放されると誘導された」と主張。全面的に争う姿勢を見せていた。

4日に行われた判決公判で、前橋地裁の吉井隆平裁判官は、警察が作成した自白調書について「兄を取り調べた警察官が、捜査に協力的な姿勢を取って容疑を認めればすぐに釈放されると誘導し、自白を強要した疑いがある」と認定。自白調書に被告の任意性がないことを指摘した。

また、弟と入れ替わっているのを目撃したという被害者側の目撃証言については「供述内容が不自然で信用するに値しない」とこれ退け、弟が運転していた、身代わりを兄に頼んでいたという情報自体が信憑性に欠けるとした。

そして「自白調書に任意性がなく、目撃証言も信用できないということは、犯人隠避事件については責任を追及することが適当とは言えない」として、2人に対して無罪判決を言い渡している。

裁判所が自白調書や目撃情報の信憑性について追及するのは極めて異例で、もちろんそれを理由として無罪判決が言い渡されるというのもレアケースだ。

《石田真一》

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