現場を通りがかった事実だけで有罪に

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「脇道から出てきたクルマを避けて事故になった」という証言のため、実際には接触などしていないものの、業務上過失傷害罪に問われた69歳の男性に対する控訴審判決公判が19日、札幌高裁で開かれた。

札幌高裁は男性を有罪とした一審の札幌地裁判決を支持、男性側の請求を棄却した。

問題の事故は2000年6月3日、札幌市南区簾舞付近の国道230号線で起きている。同日の午前6時ごろ、当時20歳の女性が運転する乗用車が対向車線に逸脱した後、元の車線に戻ろうとした際に道路左側の電柱に激突。炎上したクルマからの救出が遅れたために重度のやけどを負うなどした。

現場となった国道は60km/h制限だったが、女性のクルマは90km/h程度の速度で進行しており、当初は速度超過による運転ミスが原因の単独事故と考えられた。

ところが負傷した女性は警察の事情聴取に対して「現場の60m手前にある脇道から国道に入ってこようとしたクルマを避けようとして急ハンドルを切らされた。あのクルマが悪い」と強固に主張。

女性の後続を走っていたクルマの乗員がはみ出してきたクルマのナンバーを覚えており、この結果として近くに住む当時64歳の男性が捜査線上に浮かび上がった。

警察は事故から2日後にこの男性から任意で事情を聞いたが、この際に男性は現場を通った事実は認めたものの、女性のクルマを目撃していないと供述。また、男性が通過した時刻と事故発生時刻の間には10分近い開きがあり、「事故が起きたことすら知らなかった」と主張していた。

その場はそれで収まったが、この男性は2002年3月に「事故の主原因となった」として、業務上過失傷害罪で在宅のまま起訴されてしまう。被害車両とは接触していない、通った時間帯も違うと主張する人物の加害責任を問うという極めて珍しい刑事裁判がスタートした。

公判で検察側は、後続車の運転者が目撃したとするナンバーの記録を「男性が事故原因となった証拠」として示したが、公判中には「直後に目撃者本人が記録した」とされるメモの現物は一度も提示されなかった。

さらには事故当時の証言と公判時の証言に食い違いがあるなど、証拠能力を問われる事態にも発展している。「交差点を通過していたクルマが、はみ出してきたクルマのナンバーを一瞬で記憶できるのか」というのも争点のひとつとなっている。

しかし、一審の札幌地裁は昨年7月、「事故は接近してくる女性のクルマを被告が見落とす状態で交差点に進入したため、、被害者がこれを急回避しようとして発生した」と断定。「制限速度を大幅に超過していたという点が女性の過失になる」として、男性に対して禁固1年2カ月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。

男性の加害責任を断定する要因となったのは公判中に曖昧さが指摘され続けた目撃証言だったこともあり、男性側は即日で控訴していた。

19日に行われた控訴審判決公判で、札幌高裁の長島孝太郎裁判長は曖昧とされた目撃証言について、「交差点に飛び出してきたクルマのナンバーを走行中に目撃し、これを記憶することは可能だ」と判断。

その上で「交差点に進入したのは被告のクルマだとしか考えられない」として、被告の請求を棄却。一審の札幌地裁判決を支持した。

《石田真一》

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