「被害者の信号無視」は嘘……一度は不起訴になった男に実刑判決

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検察の判断で一旦は不起訴になったものの、民事裁判で遺族側が新たな証拠を見つけたことで加害者の過失責任が認められ、それが元で検察が再捜査に乗り出した交通事故に関係する刑事裁判で、千葉地裁松戸支部は3日、禁固2年の実刑を被告に命じた。

問題の事故は1997年11月7日、千葉県沼南町内の国道16号線で発生している。右折しようとしていた大型トラックと、当時24歳の男性が運転していたバイクが出会い頭に衝突。バイクに乗っていた男性は全身打撲などが原因で死亡した。

警察の取り調べに対し、トラックの運転手は「交差点を右折する際は、右折の矢印信号に従った」と供述。矢印信号が表示されている場合、対向車線の直進側の信号表示は赤であるため、警察と検察は「バイク側の信号無視」と認定し、トラック運転手を不起訴処分にした。

しかし、これに納得のいかない遺族側は損害賠償を求める民事訴訟と並行する形で独自に調査を開始。事故当時に交差点近くの飲食店で働いていた女性を探し出した。

この女性は「トラックの側も青、バイクの側も青だった。トラックは信号の矢印表示が出る以前に右折を始めている」と当時の状況を語った。

ただし、この女性も当初は「店の営業に影響が出る」ということで裁判での証言を拒んでいたが、遺族が「その証言で息子が信号無視をしていたという運転手の嘘が否定できる」と粘り強く説得。女性も「バイクが信号無視をしていたことになっているとは知らなかった」と協力を約束した。

その後の民事訴訟ではこの女性の目撃証言が証拠として採用され、一審は敗訴したものの、二審の東京高裁が「バイクは青信号で進行しており、トラック側の前方不注意と右折強行によって事故は起きた」と認定し、約6000万円の損害賠償支払いを命じている。

遺族はこの裁判結果を元に、検察審査会に再捜査の申し立てを行ったが、千葉地裁松戸支部は審査会の判断を待たずに捜査を開始。時効まで2週間あまりとなった2002年10月にトラックを運転していた男を業務上過失致死罪で起訴した。

3日に千葉地裁松戸支部で行われた判決公判では、トラック側の前方不注意と右折強行を改めて認定し、被告に対して禁固2年の実刑判決を言い渡した。

《石田真一》

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