奈良県警は6日、いわゆる「おれおれ詐欺」の被害者を対象に実施した聞き取り調査の結果を明らかにした。
警察官名を名乗って行う犯行が特に多い地域でもあり、被害にあった人の心境を把握し、それを積極的に啓蒙することで新たな被害の発生を防ぐ狙いがある。
この調査は詐欺事件を担当する奈良県警・捜査二課などが中心となって行っている。聞き取り対象となったのは、今年1月から3月までの間、県内でおれおれ詐欺の被害に遭ったと警察に届け出た19人。
内訳は男性6人と女性13人で、年代別では30歳代から50歳代が10人、60歳代から80歳代が9人となる。女性の被害が特に目立ち、30歳代から50歳代にたいしては子供や配偶者、0歳代から80歳代にたいしては孫を名乗って請求することが多い。
意外な結果としては、被害者の大部分は「世間でおれおれ詐欺というものが流行っている」のを知っていたとことにある。しかし、30歳代から50歳代の層では「あれは高齢者が騙されるもの」と思っていた人が多く、高齢者の場合には「自分には関係がない」や「こんな田舎では起こらない」と、いずれのケースでも自分とは無関係と考えている人が多かった。
また、奈良県は警察官名を名乗って「示談交渉に協力するから」という名目で現金を要求するケースが特に多い場所で、県警Webサイトに特設ページを作って警告するほどに頻発している。そのため、こうしたケースで被害に遭った人にも聞き取りを行った。
この結果、警察官名を名乗られた場合、その段階で警戒心が吹き飛び、一種のパニックになっていることが確認された。
他の人物から「交通事故に遭った」と言われるより、警察官名を名乗って言われた方が「真実味がある」と回答。相手が警察の専門用語を並べて話すことも多く、それがかえって信用させる要因にもなっているという。
ところが聞き取りを行っていく課程で明らかになったのは、被害者言うところの“専門用語”とは、刑事ドラマでも使われているようなポピュラーな言葉ばかりであった。
相手から「ただいま実況見分を行っており…」とか、「事情聴取を行っている最中なので本人は出せない」と言われるだけなのだが、これだけで本人が電話に出られない理由が正当化されてしまうようだ。
加えて、被害者の側にもある種の負い目がみられるという。
交通事故を名目として現金を要求されるケースの場合、子供や孫が普段から交通ルールを軽視していたり、あるいは運転が荒いなど、被害者本人が「いつか必ず事故を起こす」と危惧を抱いている場合が多い。
こうした危機感を常に抱いているため、相手から「事故を起こした」と言われた場合、警戒感が一気に吹き飛び、相手の主張を全面的に信じてしまう傾向にある。
警察では「騙す側が相手の弱みに付け込んでいる様子が確認できた」としているが、同様の被害を防ぐ対策としては「相手が何を言っても、とりあえずは本人に直接連絡をして確認を取ることがベスト」としている。
相手が警察官名を名乗る場合には「とりあえず一度電話を切り、お手数でも自分で直接に警察署へ確認を取るという手段を取ってほしい。県内に限らず、県外で事故が起こったとしても、お近くの警察署に連絡をいただければ確認は取れる」とコメント。さらなる注意を呼びかけている。