救急車の出動拒否が遠因で男性死亡

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龍ケ崎市(茨城県)など、周辺9市町村が運営している稲敷広域消防本部が、市内に在住する男性が体調不良で倒れた際の救急車出動要請を断り、結果としてこの男性が死亡していたことがわかった。

同本部は今年3月までに不適切な対応があったことを認め、男性の家族に対して謝罪するとともに、2000万円の慰謝料を支払ったという。

この不祥事は昨年3月に発生している。2003年3月12日の午前5時40分ごろ、龍ケ崎市内に住む当時45歳の男性が胸の痛みや気分の著しい不良を訴えていると、この男性の母親から119番通報が寄せられた。

稲敷広域消防本部は救急車を急行させたが、母親は駆けつけた救急隊員に対し、この男性が掛かりつけていた精神科併設の病院への搬送を要請した。

しかし、男性が指定した病院は「担当医がいない。朝になったら一般外来で来院してほしい」として救急搬入を受け入れなかったため、救急隊員は母親に対してそれを説明した。

男性自身が他の病院への搬送に難色を示したこともあり、血圧や脈拍が正常値で無いことを隊員自身が認めながらも「救急車による搬送はできない」と判断。母親の同意を得て救急車を引き揚げさせた。

ところが男性の症状は3時間後の午前8時40分ごろに悪化。母親は2度目の119番通報を行った。しかし、この際に母親が「(男性の)体格が大きくて自力でクルマに乗せられないから救急車に来てほしい」と話していたため、消防署は男性が心的な治療を受けていた経緯などからも「緊急性はない」と判断。救急車の出動を拒否した。

さらに1時間後、母親から「男性が意識を失った」という内容で3度目の通報が寄せられ、この際には通話の状況から緊急性があると判断して救急車を急行。男性が意識不明になっていることも確認し、最初に依頼があった病院とは別の病院に搬送したが、以後この男性は一度も意識を回復することなく、同年7月下旬に死亡したという。

遺族側は「治療開始が遅れたことが病状を悪化させる一因になった」という病院の所見を示し、稲敷広域消防本部に対して「出動の拒否など、緊急性の判断にミスがあったことは明らか」と猛烈に抗議した。

これを受けて同本部を実質的に運営する稲敷広域一部事務組合では、事態に関与した救急隊員などから経緯を聞いていたが、最終的には消防署側に不手際があったことを認め、遺族に対して2000万円の慰謝料を支払った。

《石田真一》

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