16日午後、静岡県浜松市内の天竜川西岸に近い中州で、モトクロス競技を終えて撤収の準備を進めていた67人が増水した川に退路を阻まれ、脱出不能となって一時孤立した。
浜松市消防本部が県の防災ヘリに出動と救助を要請し、通報から約1時間30分後までに全員が無事に救助されている。
静岡県警・浜松東署によると、中州に大人数が孤立するというトラブルが起きたのは、16日の午後2時から4時ごろに掛けて。浜松市常光町付近の天竜川西岸に近い中州で、モトクロス競技を行っていた団体の責任者を名乗る男性から「川の水が突然増水した。ダムの放水を止めてくれ」との通報が警察と消防に寄せられた。
主催者は中州に乗り入れたクルマに避難を指示したが、時を追うごとに水の量が増し、約1時間後にはまったく身動きが取れなくなった。結果として、競技参加者やスタッフなど67人、車両46台が中州に取り残された。
消防では当初ボートにより救出していたが、水量が増えて二次災害の危険性も高くなったため、静岡県の防災ヘリコプターによる救助にスイッチ。午後4時30分までに全員を救助した。
取り残された車両については、翌日に盛土を行って一時的に水の流れを止め、特設の脱出路を設けて脱出させている。
中州の使用許可を出したのは国土交通省・浜松河川国道事務署だが、主催者には「増水の危険があるときは中止するように」と注意していたという。当日の現場付近の降水量はわずかだったこともあり、競技は中止されなかった。
しかし現場から約60km上流では大量の降水が確認されており、通報直前の午後1時45分には57km上流のダムから毎秒1000トン、通報から50分後の午後2時50分には34km上流のダムから同1200トン、救出が終了してから30分後の午後5時ごろには17km上流のダムから同1600トンの放水があった。
通常、ダムからの放水が開始されるときには下流でもサイレンを鳴らして警戒を呼びかけるが、放水は数日前から断続的に行われており、これは連続された放水とみなされ、その度にサイレンを鳴らすことはなかった。こうした事情もあり、避難の判断が遅れたことも今回のトラブルの一因となったとみられる。