新型『ゴルフ』(14日日本発表)には、伝統的なゴルフのデザイン要素でも盛り込まれなかったものが多い。この理由について、ドイツ本社テクニカル・プロダクトマネージャーのユングさんは「上位モデルとファミリーであることを強調するため」と説明する。
『パサート』、『トゥアレグ』、さらには『フェートン』と共通テイストにすることで、VWとして統一されたブランドイメージをアピールしたいのだ。なるほど、各車のフロントグリルは同じテーマの造形だといえるし、丸く光るブレーキランプも同様だ。
歴史の流れからすると、プレミアム・ブランドとしての中核モデルに大衆車として一つの指標を確立したゴルフが位置づけられることに、違和感がある。しかし、もはやゴルフはベーシックカーなどではなく、「ゴルフ・ブランド」を確立した商品であり、そのブランド力をVW全体のブランド構築に有効に活用するのだ。
つまりVW全体のブランド構築のために、スタイリング上で継承されてきたゴルフ・アイデンティティを主張するディティールのいくつかが、新型では消えたのである。
そうなると、『トゥーラン』をわざわざ『ゴルフ・トゥーラン』と呼び変えたVWジャパンの販売戦略は、いささか奇妙だ。新型ゴルフとゴルフ・トゥーランとの間には、メカニズムはともかくスタイリングでの共通点は少なく、「ゴルフ・ブランド」として統一イメージの確立に貢献するとは思えないからだ。既存商品の知名度・認知度を新商品の販売で利用したかったのだろうが……。