三菱ふそうトラック・バスや国が緊急対策を決めた背景には、トラックなど営業車ならではの特殊事情がある。乗用車の場合、リコールや改善対策の入庫はスムーズにいくが、トラックやバスは生産財---つまり、走ることでお金を稼ぐ道具だ。
点検や整備で何日もクルマを遊ばせているわけにはいかない。また、冷凍車やクレーンつきなど、仕事の内容に応じて独自の架装を施しているクルマが多く、点検中の代車もない場合が大半なのだ。
もちろん、リコールを隠した三菱ふそうに一義的な責任があるのは間違いないが、そもそもリコール制度は「メーカーがリコールを周知し、ユーザーに情報を伝えることが大事」(国交省幹部)。自車の危険性を知った以上、ユーザーにも安全を確保するための責任が生じる。
点検の環境が整っているにもかかわらず、忙しさなどを理由に入庫を渋る運送事業者は「自社の運転手や歩行者などの命より、カネ儲けを優先させている」と見られても仕方がなく、運送業者にも安全確保の自覚と行動が求められる。