広島市の暴走族追放条例は違憲ではない…有罪判決

自動車 社会 社会

条例によって暴走族の集会が禁じられた広島市中心部の公園で、いわゆる「特攻服」着用で集会を行うよう配下の暴走族メンバーに指示し、実際に集会を行わせたとして「広島市暴走族追放条例」違反の罪に問われた24歳の男に対する判決公判が16日、広島地裁で開かれた。

裁判所は被告に対し、執行猶予付きの有罪判決を言い渡している。

問題の事件は2002年11月23日に発生している。被告は配下に置く暴走族メンバー約40人に「特攻服を着用して引退式をやれ」と指示。

広島市長の許可をとらず広島市中区の公園(西新天地公共広場=通称:アリスガーデン)において、同日の午後10時30分ごろから集会を強行。円陣を組んだ状態で大声を上げるなどの示威行動を行い、一般人に対して恐怖感を与えるとともに、市長命令に反して集会を続行した。

広島市では暴走族の活動を封じ込める目的で、2002年4月1日から「広島市暴走族追放条例」を施行。公共の場所で市長の許可なく特異な服装を着用し、顔面を覆い隠した上で円陣を組み、大声を上げるなどして周囲に恐怖を与える集会を開くことを条例によって禁じている。

被告の男は事件当時、広島市内を拠点とする暴力団の構成員で、配下に置いた暴走族グループを管理する「面倒見」と呼ばれるポジションにあったとされている。男の命令は絶対であり、条例潰しを目的に実施しようとした集会の指示を現役メンバーが断れる状態ではなかったとされている。

被告弁護側は「憲法で認められた集会の自由を侵害し、特攻服はいけないという部分についても表現の自由をする侵害する」として、広島市の条例は違憲であると強固に主張。同時に「違憲の可能性が高い以上、条例違反による逮捕は容認できない」として無罪を主張していた。

16日の判決公判で、広島地裁の岩倉広修裁判長は、「表現の自由は他者の権利と衝突する可能性が高く、それを調整するために必要な制約はやむを得ないと考える。暴走族の活動を封じ込めることに主眼をおいた条例の目的は正当だ」と指摘。

「度重なる暴走族の集会実施によって公共広場の平穏な利用が阻害され、周辺の商店にも悪影響を与えているなどの理由からも、暴走族追放条例による規制は合理的な関連性がある」として合憲の認定を行い、「違憲である」という弁護側の主張を退けた。

また、「暴走族追放条例の条文のうち、特異な服装という部分は不明確で、拡大解釈されて適用される危険もある」という主張については「条例で規定された特異な服装とは、暴走族や暴力団などの特定団体に属していることが着用によって一目でわかるもの」として、弁護側の主張を退けた。

面倒見として活躍していた男の罪状については、「暴走族追放条例への批判を宣伝するために集会を計画するなど、動機は自己中心的」と指摘した。しかし、「犯行については素直にこれを認めており、情状を酌量する余地はある」と判断。被告に対して懲役4カ月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。

被告側は「条例の解釈など全面的に不服である」として、即日で控訴の手続きを取っている。

なお、広島市の秋葉忠利市長は「暴走族追放条例が憲法違反に当たらないとの明確な判断が示され、今後の対策を進める上で大変に大きな意義があった。暴走族の離脱相談や居場所づくりを含めた対策を積極的に進めていく」とのコメントを判決後に発表している。

《石田真一》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 新たな高級車ブランド誕生に熱視線!BMWベースの斬新デザインに「これはカッコいい」
  2. トヨタの新型『RAV4』、SNSでの注目は「GRスポーツ一択」 ファンの気掛かりは…
  3. ホンダ『アコード』に新搭載された「ハンズオフ機能」に驚きの声「米国の話だと思った」
  4. ジープの最小モデル『レネゲード』が2027年にフルチェン! これが市販型デザインだ
  5. スズキ『スイフト』5万6000台リコール…走行中にエンストのおそれ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【調査レポート】ベトナムにおけるモビリティ市場調査~13社(四輪・二輪)の最新動向~
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  4. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
  5. シェフラーがヴィテスコ合併後初の出展、ポートフォリオ拡大と顧客対応力をアピール…人とくるまのテクノロジー展2025
ランキングをもっと見る