新しい『レジェンド』のポイントのひとつが、4輪の駆動力を自由に配分するSH-AWDだ。レジェンドのLPL(開発責任者)をつとめた本田技術研究所上席研究員の齋藤政昭氏は「SH-AWDが求めたのはドライバビリティと安定性の両立」だという。
「自由自在に走りたい、旋回性能を高めたい、というのはスポーティな走りを楽しむための当然の要求でしょう。だけど、レジェンドはスポーツカーではないので、自分の技量だけに頼ってリスクを冒しながら走るクルマではありません」
「どんな状況でも安心して走れることが重要だと考えたのです。そこで注目したのがSH-AWDです。このシステムならドライビングの気持ちよさと安定性を高いレベルで両立できるんですよ」
しかし、ドライビングの楽しさと安定性はある意味相反する部分があるのも事実。レジェンドのダイナミクス性能をまとめた本田技術研究所CO開発ブロック主任研究員の瀧口士郎氏によると「SH-AWDはステアリングで方向を決めるのではなく、駆動力配分をコントロールすることで目標に向かって進んでいきます」という。
「はっきりいってしまうと、SH-AWDの本領を発揮させてしまうとクルマが安定しすぎてしまいドライビングの楽しさが失われてしまうんですよ。だから、ドライビングの楽しさと車両の安定とのバランスにはとても気を遣いましたし、難しかったです」と微妙なサジ加減に苦労した様子を語ってくれた。
ちなみに、「ある条件を満たすと『ドライバーが積極的にドライビングを楽しんでいる』とクルマが判断し、アウト側後輪のタイヤに積極的にトルクを配分することでオーバーステア気味にハンドリングを制御する」(瀧田氏)という。ある条件とは「コーナリング中にアクセルをガンガン踏んでいるとき」だそうだ。