車上荒らしに対する発砲事件、真相は?

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2003年9月、奈良県橿原市内で車上荒らしを行い、窃盗や公務執行妨害の罪に問われた28歳の男に対する公判が7日、奈良地裁で開かれた。被告は逃走を試みた際に警官から銃撃されており、最近になって当時の記憶が回復したことから結審が先送りされた。

事件は2003年9月10日に発生している。被告ら2人は奈良県橿原市内のパチンコ店駐車場で車上荒らしを行った。

通報を受けて駆けつけた奈良県警・自動車警ら隊や機動捜査隊などの隊員が、大和郡山市内の国道24号線で容疑者の乗ったクルマを発見、周囲を取り囲んで走行を抑止した。

警官は投降を呼びかけたが、被告らの乗ったクルマはエンジンをふかし、警官に向かって突進させるような素振りを見せたため、近くにいた3人の警官が拳銃を発砲。

このうち3発が容疑者2人の首などにあたり、助手席にいた28歳の男が後に死亡。運転席にいた26歳の男(今回の被告)も重傷を負った。

後の調べで、3人の警官は発砲の際に拳銃を使用する予告もせず、威嚇発砲も行っていないことがわかった。さらには全8発のうち、5発については1人の警官が発砲していたことも判明している。

男は窃盗や公務執行妨害の罪で起訴されていたが、頭に銃弾を受けたことで記憶に障害が発生しており、被告人が証言台に立って質問に応じることはほとんど無かった。

予定では今回の公判で結審する予定だったが、被告側弁護人が「被告本人の記憶が回復した」として、急きょ被告人質問を申請。裁判所はこれを受け入れ、土壇場で被告本人の証言が実現した。

7日の公判では被告側弁護士からの質問が行われ、公務執行妨害の根拠であり、警官が発砲する理由となったクルマの発進について、被告は「シフトレバーはバックの位置に入っていた。後方に止まっていたパトカーに押し出されて前進しただけ」と証言。

また、警官の発砲については「警官が拳銃を構えたので、助手席の知人が“手を上げろ”と言った。手を上げたのに撃たれた」と語り、これまで警官が主張してきた抵抗状態ではなかったと主張している。

さらに、取り調べや公判初期にこの陳述がなされなかったことについて、被告は「後遺症で言葉にすることができなかった。しかし、懲役7年の求刑が行われたため、話しておいた方が良いと思った」などとして、一方的に進められた公判に否定的な発言も行っている。

被告人に対する質問はすべて終了せず、裁判所は結審を先送りにして次回期日でも被告人質問を続行する判断を行った。

これまでは撃たれた側の証言がなされず、状況が不透明なままだったが、今後これが一変する可能性もある。

《石田真一》

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