2004年11月、広島県内の浜田自動車道を走行中の石見交通が運行する路線高速バスがバス停を誤って通過し、このバス停で降りる予定だった乗客に徒歩でバス停まで戻るように指示していた問題で、国土交通省・中国運輸局は4日、同社に対して車両2台を各10日間の使用停止にする行政処分を実施した。
国土交通省・中国運輸局によると、問題のトラブルは2004年11月13日に発生している。
浜田(島根県)から広島駅に向かっていた石見交通の運行する路線高速バスが、千代田町今田付近の浜田自動車道上り線を走行をしていた同日の午前10時10分ごろ、乗客からの降車ボタンによる停車合図があったにも関わらず、これを見落として千代田西バス停を通過してしまった。
53歳の運転手は降車ボタンを押した76歳の女性に対して「広島北インターチェンジバス停から折り返してください」と依頼したが。女性は「迎えが来ているからここで降りたい」と主張した。
運転手はバス停から1kmほど離れた場所にある保守工事用の取り付け道路まで走り、「そこから一般道に下りるように」と女性に指示。女性を降車させるためにバスを路肩に一旦停車させ、すぐに発進した。
女性は取り付け道路から一般道に降りようとしたが、ドアが施錠されて開けることができなかったため、そのまま自動車道に戻り、路肩をバス停方向に向かって歩き始めた。
この様子を複数のドライバーが目撃。警察に対して「高齢者が高速道路上を徒歩で歩いている」と通報した。通報を受けて同隊のパトカーが出動し、取り付け道路から約300m、バス停まで約700mの地点で女性を発見。無事に保護した。
保護した隊員は当初、「近くのバス停から侵入し、高速道路を歩いてきた」と判断していたが、その後の聴取によって高速バスから降りてバス停に向かっていたことが判明。女性が乗っていたバスを特定し、運転手に対して道路交通法違反(駐停車違反)で反則キップの交付を行っている。
中国運輸局では会社側の対策にも問題が生じていた可能性が高いとして、同社への監査を実施してきたが、「バス運転手の明らかなミスであること」、「正規の手段を用い、誤乗した客をバス停まで送還する手続きを怠った」などの落ち度があったと指摘。
その上で「高速道路上を歩いていた乗客を警察が保護したため、幸いにもケガを負わずに済んだが、重大事故に発展してもおかしくない事態だった」、「運転手への指導監督が適切だったとは言えない」と判断。石見交通に対して路線高速バス用の車両2台をそれぞれ10日間の運行停止を命じる行政処分を命じた。