マイナス20度という極寒の地に、自らの製品のタフネスぶりを実証すべくボルボが持ち込んだのは、同社初の本格SUVとして好評の『XC90』に追加されたばかりで「日本では今年後半に発売予定」という4.4リッターの8気筒エンジン搭載モデル“V8”と、同じく『V50』に追加されこちらはすでに日本でも発売済みの“T-5 AWD”という2種類。ちなみに、前者はボルボ初の8気筒モデルであるという大きなトピックと同時に、「エンジンはヤマハ製で、かつATはアイシンAW製…」と日本人にとっては何とも親近感の湧く(?)パワーパックのスペックの持ち主であることも気になる一台。
というわけで、まずはそんな最新のXC90も含め、「最新ボルボ全モデルへの研究・開発の任を負う」という乗用車&コンセプト・モデル担当シニア・マネージャー クリスター・クラッソン氏を捕まえ、いろいろと“探り”を入れてみることにした。
じつはボルボというのは、ほんの数年前までは「我々にとっては3リッター以上の排気量や6気筒を超えるシリンダーというのは不必要な数字」と豪語(!?)をしていたメーカーでもある。ところが今回の作品を見ると、まるで掌を返したような“重厚長大”な心臓を搭載。そんな「趣旨変え」はいったいどうしてなのか? は当然聞いてみたくなる質問だ。そんな疑問に対するクラッソン氏の答えはというと…。
「確かに我々は過去にそう述べた。が、今回の投入はその後の市場の変化や顧客の要望によるもの」と、半ば予想した通りのコメントが返ってきた。じつはヨーロッパのメーカーというもの、ボルボに限らずこうして平気で(?)前言を翻すことは少なくないのだ。
もっとも、「そもそもXC90は『S80』の骨格をベースに生まれたクルマ。となると、セダンにも8気筒エンジンの搭載計画はあるのか?」とさらに水を向けると、「ボルボほどの(小さな)規模のメーカーにとって、そこまで一気に守備範囲を広げるのは容易ではない」とクラッソン氏。確かに、さほどの規模が見込めない(XC90 V8は、当面年間1万5000台規模を予定という)新エンジンの生産を外部に委託するのもそのあたりが理由だろう。
ちなみに、「前突時のクラッシャブルゾーンを可能な限り確保するため限界までコンパクトに作った」というこのエンジンの開発自体は「ヤマハではなくボルボが担当している」と氏は語る。ATにアイシン製を用いた理由も、「同じくコンパクトさに長けていたため」だそうだ。(つづく)