【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その2 入念に見直されたシャシー性能…岡根幸宏チーフエンジニア

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【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その2 入念に見直されたシャシー性能…岡根幸宏チーフエンジニア
【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その2 入念に見直されたシャシー性能…岡根幸宏チーフエンジニア 全 7 枚 拡大写真

システム出力200kWというハイパワーを実現し、ハイブリッドカーの新領域を拓いた『ハリアー/クルーガー・ハイブリッド』。チーフエンジニアの岡根幸宏さんは、ハイブリッドのメカニズムそのものの高度化より、むしろハイパワーハイブリッドSUVとして「かつてない走り」を実現させることのほうに腐心したという。

「ハイパワーTHSII(ハイブリッドシステム)が簡単だったというわけではありませんが、2代目『プリウス』に初搭載されたTHSIIはかなり完成度の高いもので、高出力化のめども立っていました。ハイブリッドをどう進化させるかということよりは、SUV随一の走行性能を持たせるにはどうしたらいいかということのほうが関心事でしたね」

ハリアー/クルーガー・ハイブリッドの最大出力は時速100km/hのときで200kW、すなわち272ps。単純にはエンジン出力155kW、バッテリー出力45kWの合計値が最大出力という計算になる。が、たとえば全開加速時はエンジン出力のうち109kWをジェネレーター(発電機)の駆動にまわし、電気モーターのトルクを最大限活用するといったように、広い速度域でエンジン出力や回生エネルギーを効率的に使用するため、内燃機関と変速機の組み合わせに比べて、パワーバンドは格段に広い。50-80km/hの中間加速3.6秒という5リットル級セダン並みの加速性能はその表れといえる。そのパワーを生かすため、走行性能のチューニングを根本から見直そうというのが岡根さんの考えだった。

「ハイブリッド化による重量増が4WDモデル比で約120kgあったため、サスペンションの再チューニングは必要だったのですが、ただ重量増に対応するのではなく、大パワーをじゅぶんに受け止められるよう、セッティングを徹底的に見直しました」

仕様の見直しはタイヤ、サスペンション、ショックアブゾーバー、ブッシュといった足まわり部品からボディにまで及んだ。

「ハリアー・ハイブリッドのほうは、全グレードともロール剛性アップなど、操縦安定性の向上を図っていますが、Sパッケージはタイヤもオンロード性能重視のサマータイヤ、ブリヂストン「ポテンザRE031」を装着しています。グリップ力が高いとボディへの入力も大きくなるため、Sパッケージはボディも補強材を入れてねじり剛性を高めています。クルーガー・ハイブリッドも全グレードに17インチタイヤを採用、スポーツチューンドサスペンションも装着しています」

ハイブリッドカーの選択肢が少ない今、ハイパワーハイブリッドSUVというだけで価値ありと目されそうだが、岡根さんはあくまでクルマとしての魅力を引き出すことにこだわった。『ハリアー/クルーガー』と初代から付き合ってきたエンジニアならではの思い入れも、そのこだわりの源なのであろう。(つづく)

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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