【ダイハツ ハイゼットハイブリッド詳報】その2 トヨタグループの利を生かしたシステム構築

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【ダイハツ ハイゼットハイブリッド詳報】その2 トヨタグループの利を生かしたシステム構築
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商用車の燃費向上という使命を担う『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』の心臓部は、どのような構成となっているのだろうか。

基本はエンジン走行がメインでモーターがパワーアシストを行なうパラレルハイブリッド方式。既存モデルのパーツが可能な限り流用されており、エンジンは『ハイゼットカーゴ』のMT用自然吸気(659cc直3DOHC 50ps/6.4kgm)で、トランスミッションは同ターボ用の電子制御4速AT。その間にアシストと発電を1台でまかなうモーター・ジェネレーター(12.8ps/4.7kgm)を挟み込むことでハイブリッド化している。

「信頼性、コスト、貨物スペースの確保といった商用車に求められる要素を考慮し、当初からシンプルなパラレル方式で行こうと考えていました。性能向上をとことん追求するなら、トヨタ『プリウス』と同様のシリーズ・パラレル方式(エンジン出力を駆動にも発電にも使う)も使えるのですが、そっちは乗用車向きですね」(製品企画部の鈴鹿信之さん)

開発コスト削減のため、ハイブリッド化に使う部品の多くは、じつは既製品だ。モーター・ジェネレーターはスペックこそ違え、ハードウェアはトヨタのミニバンHV『エスティマハイブリッド』の後輪用モーターそのもの。ニッケル水素電池を使用したバッテリーモジュールも『エスティマハイブリッド』のものを流用している。どちらも軽にはオーバースペックのように思われるが、ビジネスユースに耐えるスペックということで選択されたという。

「トヨタグループ企業というメリットを生かし、買ってくればすむというものについては新規開発はやっていません。ただし、ハイブリッドの中核技術であるVCU(ビークルコントロールユニット:モーターアシストや回生などのエネルギーを管理する装置)は独自に開発しました」

ハイブリッド化によって、実際、どのくらいの燃費節減効果を得られたのか。まだ国交省の型式を取得していない“改造車”であるため、10・15モード燃費は非公表だが、「モード燃費に相当する社内テストでは、ノーマル比で約3割ほど向上しています」。ノーマルのATモデルのモード燃費から計算すると、約20km/リッター程度ということになる。

が、『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』が本領を発揮するのは、モード燃費よりむしろ実走行における燃費の改善であるという。商用車の場合、ドライバーによる省燃費走行はほとんど期待できない。配達、運送、巡回訪問などは、いずれも時間との戦いだからだ。モード燃費のような緩やかな加速などまずやらないし、短時間駐車の場合は大抵、エンジンもかけっぱなしだ。

「2002年に実証走行用車両が完成してから、官公庁や企業にたっぷり使ってもらい、実際にどういう使い方がなされるのか、さらにはどういう走行パターンのときの燃費が課題となるのかといったデータを蓄積しました。それにもとづいてハイブリッドシステムの作動をモード燃費ではなく、実走行に最適化するかたちでチューニングしたんです」

ハードなビジネスユースにおいては、条件によって違いはあるものの、約5割程度の燃費向上が期待できるという。このあたりのチューンは、モード燃費競争にしのぎを削る乗用ハイブリッドとはまったく異なるものだ。(つづく)

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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