【神尾寿のアンプラグド】IT新改革戦略とケータイGPS普及のシンクロナイズ

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【神尾寿のアンプラグド】IT新改革戦略とケータイGPS普及のシンクロナイズ
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1月19日、政府は小泉首相を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)にて、今後5年間の国が取り組むIT推進の方針をまとめた「IT新改革戦略」を発表した。詳しくはニュース記事に譲るが、これは2003年7月に発表された「e-Japan戦略2」に続くものだ。

この中で自動車交通分野については、「安全・安心な社会の実現」の項目の中で重点項目として取り上げられており、2012年末の交通事故死亡者数5000人以下という政府目標が掲げられた。この数値目標を実現するための鍵がITSである。

◆ITSは普及フェイズへの移行を余儀なくされる

とはいえ、ITSの諸要素が、未だ「明日の領域」から出ていないのも事実だ。大規模普及に至っているのはVICSくらいで、ASVなどで取り組まれた先進安全装置の多くが装着率10%を超えられていないのが実情だ。今回の「IT新改革戦略」でも、

「これまで、これら交通事故における問題を解決する施策として、官民をあげて高度道路交通システム(ITS)の実用化に取り組んできたが、実証実験の段階の施策が多く、実用化には至っていない、あるいは、実用化されてもその普及が不十分である」

と書かれており、ITSの課題が"普及プロセスの確立"とされている。

裏を返せば、今回、政府がIT新改革戦略で「2012年に交通事故死亡者数5000人以下」と数値目標を定め、その実現に「ITの活用が有効」と明記したことで、ITSは普及フェイズへの移行を余儀なくされたことになる。今後は、ITSの実用化だけでなく、普及まで睨んだ研究開発をしていかなければならない。

◆インフラ協調を政府も後押し

今回のIT新改革戦略で興味深いのは、これまでITS実用化の主役だった自立型先進安全装備だけでなく、AHSに代表されるインフラ協調型安全運転支援システムの実用化が明記されていることだ。

実現に向けた方策として、2006年から官民一体の連携会議で検証・実験を開始し、2010年には「安全運転支援システムを事故の多発地点を中心に全国への展開を図るとともに、同システムに対応した車載機の普及を促進する」(IT新改革戦略)としている。

これまでITS諸要素の実用化の中で、道路インフラ協調型のシステムは、最も実現に時間がかかると言われていた。しかし、今回、政府があえてインフラ協調型に明言したことで、この分野の普及に拍車がかかるのは間違いないだろう。

◆GPS携帯電話はITSでも使われる

もうひとつ注目の点が、歩行者の安全についての言及だ。

歩行者の事故死亡者削減については、「歩行者・道路・車両による相互通信システムについて、官民連携により2010年度までに必要な技術を開発する」と触れられているが、このシステムにおいて鍵になりそうなのが、携帯電話とGPSの融合だ。

携帯電話は2007年4月から、緊急通報時の位置特定目的でGPS搭載が義務化される予定だが、こちらのタイムテーブルを見ると総務省では「2009年4月時点でGPS方式普及率50%、2011年4月時点でGPS方式普及率90%」を掲げている。この数値目標にキャリアが従えば、2010年〜2011年頃には、ほぼすべての携帯電話にGPSが搭載されている。歩行者ITS分野において、GPS携帯電話が活用されるシナリオは十分に考えられる。

IT新改革戦略は、今後の自動車ビジネスはもちろん、携帯電話など他のモバイル市場にとっても波及効果を及ぼしそうだ。

《神尾寿》

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