「スズキのクルマはこれまで、どちらかというと質実剛健型で、エモーショナルデザインを持つモデルは少なかった。その点『MRワゴン』は、ウチにとってはチャレンジングなクルマです」
こう語るのは、開発を指揮したチーフエンジニアの蓮池利明さん。
「狙い自体はモノフォルムデザインを採用した初代MRワゴンと同じなのですが、新型はボディパネルに強く陰影をつけるなどして、『ワゴンR』との差をより明確にしました」
軽自動車首位のスズキは、同2位のダイハツと熾烈な販売合戦を繰り広げている。トータルの販売台数は、強い販売力を背景に持つスズキが上回っているが、ワゴンR、ダイハツ『ムーヴ』といった、軽の主流商品となっているトールワゴン系の販売台数ではここ最近、ダイハツの後塵を拝していた。
スズキのラインナップのなかで手薄さが目立っていたのは、人気が高まっているエモーショナル系デザインのモデルだった。新型MRワゴンはスズキにとって、初の本格的なエモーショナル系トールワゴン。ダイハツの追撃を振り切り、軽自動車業界首位のポジションをがっちり守りたいスズキにとって、きわめて重要性の高いモデルだ。
デザイナーには『スイフト』で内外から高い評価を得た結城康和氏を起用。単なる“カワイイ”系ではなく、随所に強いテーマ性を盛り込み、独自性の高いアピアランスを持たせた。室内も空間を拡大したばかりでなく、シートの座り心地や各所の質感を大幅に高めた。スズキのやる気が全開で反映されているクルマ、それが新型MRワゴンなのである。