神様はブラジル人…ワールドカップ で昇天しないために

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神様はブラジル人…ワールドカップ で昇天しないために
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日本対ブラジルの試合で、日本人ならば永遠に語り継いでいきたいエピソードが、「マイアミの奇跡」と呼ばれるアトランタ・オリンピックでの勝利である。1996年7月22日に行なわれたこの試合で、日本代表はブラジル代表を1対0で破った。

その時のメンバーで今回のワールドカップに出場しているのは、日本側では川口能活と中田英寿、そして、ブラジル側ではジダ、ロベルト・カルロス、ロナウドである。

私はこの試合をブラジルのとある酒場で観ていたのだけれど、もちろん日本が勝つとは思っていなかった。川口の好セーブが繰り返されるたびに周囲からこちらに浴びせられる視線は敵意を帯び始め、とても酔うどころではなかったことを憶えている。私が無事帰宅させてもらえたのは、その試合が予選リーグ緒戦でのできごとだったからであり、ブラジルの即時敗退を意味しなかったからである。

予期せぬ敗戦で目が覚めたのか、その後ブラジルは予選リーグを2勝1敗で突破、準決勝までいったが、そこでナイジェリアと延長戦まで戦って敗れた。その試合の直後、ブラジルの首都ブラジリアにあるナイジェリア大使館が何者かによって放火されている。ナイジェリア大使は、「勝利の代償は高くついた」とのコメントを出したのだけれど、その後外交問題に発展したとかいう話は聞いていない。「想定内」のできごとだったということか。

ナイジェリアは、ブラジルに勝った勢いをそのまま維持して、決勝戦では優勝候補とされたアルゼンチンをも撃破して見事に金メダルを獲得している。この時、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで決勝戦のテレビ中継を観戦していた53歳のブラジル人男性が、何を血迷ったのかナイジェリアのゴールに歓声を上げてしまい、周りにいたアルゼンチン人数人(証言によると7人)に袋叩きにされて命を落としてしまった。ブラジルで訃報を知った彼の家族は遺体搬送に必要な経費5000ドルの支払能力がなく、亡骸は皮肉にもブエノスアイレス市内の墓地に埋葬されることになった。

一方、ナイジェリア国内では、優勝が決まった瞬間に1人が興奮のあまり心臓発作を起こして死亡、2人が歓びのあまりオートバイの曲乗りをやって激突死、別の2人が車道に飛び出して轢かれている。

長生きしたければ、サッカーファンとは距離を置いて接したほうがいいのかもしれない。

筆者紹介:高木耕(たかぎ・こう)---神田外語大学専任講師。過去にマラカナン・スタジアムに100回以上通ったことと、テレビでビスマルク選手の通訳をしたこと、通訳として参加したあるイベントでキーパーをやらされ、当時小学6年生だった伊東輝悦選手にゴールを決められたことがあるのが自慢。大学ではポルトガル語を教えているが、学生にジーコ監督の物まねを仕込んで喜んでいる。3度のメシより好きなサッカーでメシを食っていくのが未来の夢。

《高木耕》

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