世界シェア15%へ、新設だけで10工場
2010年に単体ベースで1040万台規模の世界生産を計画しているトヨタ自動車は、同年までに海外だけでざっと年260万台分の能力増強を図る方針だ。新設工場は、おおむね10工場に及ぶ。世界シェア15%を掲げた「2010年グローバルビジョン」は、後半のヤマ場に差しかかる。海外工場の円滑な立ち上げは、23日に発足した張富士夫会長・渡辺捷昭社長による新首脳コンビにとって最大の経営課題となる。
10年時点の生産計画では、国内が420万台程度、海外は620万台程度としている。昨年に年30万台規模の能増を図った国内は、今後、ラインの手直し程度はあっても大きな増強は想定していない。
05年の実績(737万台)に対し、約300万台の供給力を高めることになるが、大半は海外だ。未決定分(筆者推定)も含む10年までの海外供給力増強マップを別表のように作成してみた。国内主体で来たトヨタの内外生産比率は07年に初めて逆転、10年まで海外で毎年50万台レベルの生産能力が積み上げられる。
◆能増の未確定分はなお120万台強に
今年は5月に操業したばかりの中国・広州トヨタと米国テキサスの2工場を新設、タイとフランスの既存工場の能増を合わせると年42万台の供給力がプラスされる。同様にロシア工場などが稼動する07年は年57万台といった具合だ。
08年のカナダ第2工場までの確定分を合計すると123万台の工場新設・能力増が確定しているが、今後もさらにそれと同等レベルの増強が必要となる。従って、今年から来年にかけて、新工場の立地が相次いで正式に決まることになろう。
追加の拠点としては、北米で8番目となる米国新工場や中国の広州第2工場、さらにインドとフランスでの第2工場が有力視されている。こうした急拡大を支えるには質、量ともに充実した海外生産要員の確保とサプライヤーとの連携が大前提となる。
◆主要工場・サプライヤーを視察した張新会長
生産要員のトレーナーを計画的かつ効率的に育成するのがトヨタの「グローバル生産推進センター」(GPC)。今年3月までに米国、欧州(英国)、アジア(タイ)の海外3極に出先機関を開設、「トヨタ品質」を確保しながら世界各地での生産増に対処する体制を一応整えた。
一方、昨年6月に社長を退任、「1年かけて海外をじっくり視たい」としていた張会長は、主要工場の「1次サプライヤーまで視察することができた」と言う。課題のツボは押さえたようだ。トヨタ生産方式の第1人者である会長と、調達のプロである社長の新首脳コンビが海外に特化した空前の能増を引っ張って行く。