【トヨタ リコール問題】運転者が感じた恐怖を真摯に受け止めてほしい

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熊本県警は2000年6月に熊本市内の国道3号で発生した三菱『パジェロ』の追突事故について、この事故が「ブレーキホースの欠陥を知りながら、リコールを行わなかったことが事故に結びついた」として、三菱自動車の幹部を業務上過失傷害容疑で書類送検するという前歴がある。水面下で捜査が進められてきた今回の件では「熊本がまたリコール案件を挙げた」と、警察庁の幹部も驚くほどだった。

だが、「今回のトヨタの案件と三菱の案件には大きな違いがある」と、熊本県警のある捜査員は説明する。それは実施時期の問題はあるものの、トヨタ自動車はリコールを行っていたということ。ヤミ改修を続け、リコールを行ってこなかった三菱自動車とはこの部分が大きく異なるという。このために捜査も強制ではなく、任意捜査を中心に行ってきた。

一方、事故の深刻度には大きな差がないと見る捜査員もいる。「パジェロはブレーキを踏んでも止まらなかった。そして今回のハイラックスサーフはハンドルを切っても曲がらない。両方ともクルマが持つ当然の機能を部品の欠陥によって失ったことは大きな問題だ。たまたま死亡事故が発生しなかっただけであり、機能不全に至る危険性がどのような理由で看過されたのか調べを進める必要がある」と説明する。

今回の件では、事故を起こしたクルマを運転していた男性が初期の段階で「ハンドル操作ができなくなった」と強固に主張したことで、捜査員の注目がリレーロッドに向かったこともポイントだ。事故の発生責任が運転者にあるのか、それともクルマにあるのかで展開は変わってくる。このあたりも運転者が初期の段階でブレーキ不具合を主張した三菱パジェロの案件と似ていたそうだ。両方の事件とも、ごく普通に使用しているかぎりは「壊れることなど思いもしない」というパーツの欠陥が原因で発生している。

ある捜査員は「メーカーにとっては単なる部品の問題かもしれないが、走行中に突然ハンドルが切れなくなる、対向車に突き進んでいく恐怖を味わった運転者の立場で考えていただきたい」とも語る。

今回の“業務上過失傷害”という容疑は、重傷事故の一端が自動車メーカーにもあった、警察はそう判断したということを表している。(了)

《石田真一》

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