登録車の販売は1960年代後半のレベル
「国内営業の責任者として日夜胃が痛い」。日産自動車の志賀俊之COOは3日、東京の本社で開いた軽自動車『オッティ』発表の会見で、不振の国内販売に話が及ぶとこう漏らした。
今年度上期(4−9月)の新車販売(軽自動車含む)は、前年同期に比べ17%もの落ち込み。前の中期計画「日産180」が終了した昨年10月以降は丸1年のマイナスにはまっている。
今年度上期の販売実績のうち、登録車に限ると約2割減少の29万台余りと30万台を割り込んでいる。ちなみに半期での30万台割れを過去にさかのぼってみると、1960年代後半まで行き着いた。初代の『サニー』が登場した当時だ。
1年前、日産は3年半で世界販売を100万台増やすという「180」のコミットメントを見事に成し遂げた。日本での販売はこの計画の途中で下方修正を余儀なくされたものの、半年に6車種という新モデルの集中投入もあって修正計画は概ね達成された。
◆シェアを守れない販社のジレンマ
だが、その後の「調整」は「ここまで落ちるとは予想だにしなかった」(日産系ディーラー社長)という深みにはまっている。上期には登録車の全需が前年に比べ7.5%のマイナスと不調で、過去最高になった軽自動車にシフトしているという客観情勢もある。
ただ日産の場合、上期は軽販売も2%しか伸びておらず、明らかに市場から取り残されている。あるディーラー社長は「台数を追うための条件(値引き)は出せない状況にある」と、シェアを守るための日産からの支援が不十分と示唆する。
カルロス・ゴーン社長の「ブランド力のためにも収益は犠牲にしない」という方針は、それはそれでひとつの見識だが、ディーラーの間には「どこまで落ち込むのか」という方向の見えない焦燥が募っている。
◆商品戦略とコミットメントのツケが…
「新モデル効果が半年も続かないという世界でも異例の市場になった」(トヨタ自動車首脳)日本で、新モデル投入の平準化を欠いたここ2年の日産の商品戦略の齟齬が一気に表面化している。短期目標のコミットメントに翻弄された「180」の反動も大きい。
志賀COOは3日の会見で、84万6000台から80万台程度へと下方修正した今年度の国内販売目標について、『スカイライン』など今後の新モデル投入によって「その数字は何とか達成したい」と強調した。
だが、80万台に達するには今月以降の下期で7%の伸びが必要となり、ハードルは高い。相手も消極的なGM(ゼネラルモーターズ)との「提携交渉にさく労力をホームマーケットの再建に振り向けて欲しい」(国内ディーラー社長)という声に、首脳陣はどう耳を傾けるのだろう。