ホンダが9日のITS世界会議で発表した「インターナビウェザー・豪雨情報」は、トライアル(試用)サービスとして10日から提供される。対象となるのは2005年5月発売の『ステップワゴン』以降に採用された純正ナビ。トライアルサービスのため、インターナビ・プレミアムクラブ会員ウェブサイトからの登録が必要だが、人数に制限はない。
登録が必要な理由として、インターナビ推進室の今井武室長は「今回はあくまでもトライアルサービスであり、それをご理解いただきいから」と話す。通信による情報取得が5分もしくは10分毎を推奨で、定額制の通信サービスを利用していない場合にはユーザーに通信料の負担が大きいという理由のほかにも、「提供される豪雨情報は10分後あるいは20分後までの予測データであり、予測できなかった場合の苦情など、安全情報を提供することにたいする理解が必要」(今井室長)という理由がある。
大雨を起因とした水害には、河川の堤防などが決壊する「外水氾濫」と、下水の処理能力を超えた雨が降ることで、逃げ場を失った水で道路が冠水する「内水氾濫」の二つがある。前者は主に台風や発達した低気圧によって発生し、後者は局地的な雷雨によって発生する。前者は雨が降る状況というのが比較的予測しやすいが、後者は地下排水施設の状況によっても左右され、被害がどの程度まで拡大するのかが予測しにくい。
さらに日本の雷雨は「気団性」という“単独の積乱雲”が起こすものが多かったが、最近では「マルチセル」という“複数の積乱雲”が関係する新しいタイプの雷雨が増えてきた。都市部で顕著となったヒートアイランド現象による上昇気流が関係しているとも言われているが、複数の積乱雲が発達や減衰を繰り返しながら長時間に渡って大量の雨を降らすため、内水氾濫に見舞われるケースも増えている。
「インターナビウェザー・豪雨情報」では、日本気象協会が自治体に向けて防災用途として提供する雷雨予測情報(1kmメッシュ、10分更新)と、インターナビによる交通情報をミックスした状態で提供する。ただ単に「雨が降ります」というだけではなく、ルートを進むことで豪雨に遭遇する場合にのみ注意を喚起し、遭遇が避けられるような場合には警報しない。
「台風や低気圧の雨であっても、時間あたり雨量が50mmを突破する場合には同様の喚起がなされますが、都市部での突発的豪雨も想定している」と今井室長は語る。内水氾濫時に危険なアンダーパスが多く設置されているのも都市部が中心となる。