【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その4

自動車 社会 社会
【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その4
【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その4 全 1 枚 拡大写真

アジア諸国のシートベルト着用率は?

アジアでも、モータリゼーションが進展しつつある国々では、先進諸国が歩んできたのと同様、交通安全問題や環境問題が顕在化している。他方、交通の実態を把握するための統計は充分とは言い難く、シートベルト着用率のデータも入手しにくい。

JAFの海外実態調査(※)では、アジアのいくつかの都市で、シートベルト着用率の現状を実地調査している。前席の着用率は、シンガポール(90%)、広州市(86%)など高水準な都市もある。(表1)

◆全席義務化に踏み切ったシンガポール

他方、後席の着用率は、シンガポールの51%以外、すべて1桁台に留まる。シンガポールは1993年、全席義務化に踏み切っており、反則金8000円と違反点数3点が課される。シンガポールの後席着用率50%台は、ペナルティを設けた後の欧米諸国と同じくらいだ。

他の都市では、前席に限った規制が中心になる。北京市は、全席義務化しているが、2004年にペナルティや取り締りが強化されたばかりで、遵守意識の普及はこれからだろう。韓国では、高速道路のみ、後席も義務化されている。

シートベルト着用は、アジア諸国でも、なるべく早期に“全乗員の保護”の考え方のもと、全席義務化に移行すべきだ。年齢や着座位置で区別する必要はないことは、欧米諸国の経験から言えることだ。

◆日本のこれから

日本の交通安全対策には、2012年までに交通事故死者数を5000人以下にするという目標がある(2005年の交通事故死者数は6871人)。後席シートベルト、チャイルドシートの着用普及は、この目標を実現するための重点対策のひとつだ。

そのため警察庁は、今年4月、「交通安全対策推進プログラム」で、2010年までに後席シートベルト着用率を50%以上にする、との目標を掲げた。

目標を達成する上で、紹介してきたような他国の事例は、大変参考になる。英国のインパクトあるキャンペーン、OECD諸国のペナルティの導入、アメリカの“見せる”、“褒める”要素を入れた取り締りなど、検討に値するものだ。日本で適用するとともに、モータリゼーション進展途上にある国々にも紹介していくべきだと思う。

※日本自動車連盟(JAF)「後席シートベルト着用に関する海外実態調査」2006.7
http://www.jaf.or.jp/safety/data/image/2006back_belt.pdf

《伊東大厚》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ライバルはアルファード? メルセデスベンツの最高級ミニバンが日本初公開!…ジャパンモビリティショー2025
  2. カローラクロスと立場が逆転、だからこそ生まれた「斬新セダン」のデザイン…ジャパンモビリティショー2025
  3. 三菱自動車、国内販売は5期連続増 2025年4~9月期実績
  4. アバルト最初のSUV『パルス』、Netflix『ストレンジャー・シングス』仕様をブラジルで限定発売…隠し装備も
  5. インフィニティは最上位SUV『QX80』にGT-Rエンジン移植、1000馬力超「R-Spec」発表へ…SEMA 2025
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る