新型VW『ゴルフGT TSI』はじめ、欧州車の過給器はエンジンをより高効率化、“ミニマイズ”するための技術だ。ひとくちにミニマイズといっても、単に小排気量エンジンに高ブーストをかければOKといった簡単なものではない。
小排気量の過給エンジンは、ブーストがかからなければ単なるトルクの低いエンジンである。低い回転数から過給が立ち上がるようにしなければ、大排気量エンジンの代わりにはならない。
低回転からターボのブーストを立ち上げるためのソリューション技術としてよく使われているのは、タービンブレードに当たる排気ガスの流速を調節する機構を備えた可変ジオメトリー(VG)タービンだ。このVGタービンは昨今のターボディーゼルブームのなかで大いに進化した技術だが、決して万能ではなく、ごく低回転の領域ではトルク不足が起こってしまう。
フォルクスワーゲンは発想を変え、VGタービンによるシングルターボではなく、固定ジオメトリータービンを使い、低回転域においてはアイドリング近辺からブーストが立ち上がる機械式スーパーチャージャーに過給をサポートさせ、発進時のトルク不足を解消した。
このシステムの効果はかなり大きく、2トンを超えるバンモデルに1.4リットルTSIを搭載した実験車両を運転したモータージャーナリストの山口京一氏は「本当に力強く走った」と、その効果を高く評価した。今後、ますますさかんになるとみられているエンジンのミニマイズ競争に、フォルクスワーゲンが強烈な一手を放った格好だ。