盗難の立証責任は保険会社にあり…で高裁に差し戻し

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所有者が海外出張中に盗難にあったクルマの車両保険金の支払いを巡り、所有者と保険会社が争っていた民事訴訟の上告審判決が17日、再高裁第3小法廷で行われた。裁判所は「盗難を立証する責任は保険会社にある」と判断して2審の福岡高裁判決を破棄。同高裁に差し戻した。

この所有者は2000年11月にイモビライザー(盗難防止装置)が搭載された国産の高級乗用車を購入した。所有者がフィリピンに海外出張していた2002年10月、自宅マンションの駐車場に何者かが侵入し、このクルマを盗んだことから、所有者は2001年から契約していた損害保険会社に対して車両保険金の支払いを求めた。

しかし保険会社は「イモビライザーが搭載されたクルマを盗み出すのは事実上不可能」として、保険金の支払いを拒否していた。

犯行の様子は防犯カメラによって記録されていたが、容疑者が盗まれたクルマに乗りこみ、発進するまではわずかな時間であり、保険会社は「イモビライザー付きのクルマがあまりにも手際良く盗まれており、容疑者と所有者が共謀していた可能性が考えられること」を支払い拒否の根拠としていた。これを不服とした所有者は保険金の支払いを求め、提訴していた。

1審の福岡地裁は所有者に「所有者側に立証の責任あり」としつつも、「容疑者と所有者の共謀を疑う事情はない」と判断して保険会社に支払いを命じたが、2審の福岡高裁は1審の流れを継承しつつも「所有者の立証が不十分であり、容疑者と男性が共謀していた疑いが拭い去れない」として請求を退けていた。

17日に行われた上告審判決で、最高裁第3小法廷の上田豊三裁判長は「所有者の盗難関与を立証する責任は保険会社にある」と判断。所有者(保険金請求者)は「クルマが盗まれたという外形的な事実を立証すれば足りる。盗難が所有者の意思に基づかないものであることを立証すべき責任は負わない」として、2審の福岡高裁判決を破棄。審理を高裁に差し戻した。

なお、今回の訴訟の争点のひとつでもあった「イモビライザー付きのクルマが簡単に盗まれるのか」という点について、最高裁は今回の判断では言及していない。

《石田真一》

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