【伊東大厚のトラフィック計量学】シンガポールの交通政策に学ぶ その2

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【伊東大厚のトラフィック計量学】シンガポールの交通政策に学ぶ その2
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シンガポールの陸上交通戦略とは?

前回は、シンガポールのロードプライシング(Road Pricing、以下RP)を紹介した。シンガポールの交通政策といえば、RPや高額の自動車税など、ドライバーにとってキツイ話ばかりが有名だ。

しかし、需要管理は、シンガポール陸上交通戦略4つの柱のうち、一部に過ぎない。シンガポールの都市交通政策の成功は、これら総合的な取組みによって実現したと見るべきだろう。需要管理以外の施策について、事例を挙げながら、少し解説したい。

【シンガポールの陸上交通戦略 4つの柱】
1.交通と土地利用計画の統合
2.道路網の拡充とその最大限の活用
3.公共交通の改善
4.道路利用の需要管理 ←ロードプライシングは、この部分の一施策

◆1.交通と土地利用計画の統合

シンガポールでは、1970年代初頭から、政府は土地利用と交通計画の統合コンセプトを持っていた。21世紀初頭の人口を400万人と想定し、全島を工業、商業、住宅などをゾーン状の土地利用配置とし、それらを効率的に結ぶ交通網によって、可能な限り職住隣接の生活が実現するような都市を目指すとしていた。(図1)

交通網整備についての考え方は、まず、鉄道、バス、タクシーなど公共交通を重視しており、乗り換えなど利用しやすさに配慮した整備が強調されている。

他方、自家用車の利便性を否定しているわけではない。無秩序な自家用車の選択は道路混雑につながり、自家用車が本来持っている利点を相殺してしまうため、RPなど需要管理が必要、との考え方だ。

事例を紹介しよう。郊外駅の周辺では高層マンションが建設され、通勤の際、鉄道を利用しやすいよう配慮されている。また、写真1中央のやや低い建物は駐車場で、駅でクルマから鉄道に乗り換える、パーク&ライドも可能だ。

シンガポールは、緑多く美しいまちだ。写真2は、都心の商業地区であるが、街路樹や歩道スペースが充分にとられている。

◆2.道路網の拡充とその最大限の活用

公共交通を重視した交通網といっても、写真1、2でもわかるように、幹線道路は片側2車線以上、高速道路は3車線以上で、基本的に無料だ。幹線道路に関しては、日本より、はるかに整備が進んでいると言ってよい。

整備された道路を最大限に活用している例として、駐停車スペースの整備を挙げよう。シンガポールは、駐車スペースが充分に確保されている。見る限り、都心でも満車になることはなく、料金も30分で40円程度と低廉だ。

路上駐車はまったく見かけない。取締りが厳しいのは日本と同様だが、これなら、わざわざする路駐する人もいないのだろう。バスベイやタクシーベイも豊富だ。バス停やタクシーの待ち行列で渋滞する日本とは、このあたりも多いに違う。(写真3、4)

《伊東大厚》

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