【伊東大厚のトラフィック計量学】シンガポールの交通政策に学ぶ その3

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シンガポール陸上交通戦略の4本柱

シンガポールでは、4本柱からなる陸上交通戦略に基づき、総合的に都市交通政策に取組んできた。前回、4本柱のうち「1. 交通と土地利用計画の統合」、「2. 道路網の拡充とその最大限の活用」について解説した。引き続き、「3. 公共交通の改善」以降を解説したい。

【シンガポールの陸上交通戦略 4つの柱】
1. 交通と土地利用計画の統合
2. 道路網の拡充とその最大限の活用
3. 公共交通の改善
4. 道路利用の需要管理

◆3. 公共交通の改善

シンガポールの公共交通サービスは、とても充実しており、料金も低く抑えられている(表1参照)。

MRT(Mass Rapid Transit)と呼ばれる鉄道は、朝の通勤時間帯でも新聞が読める程度の混雑であり、駅にはホームドアも完備している。

LRT(Light Rapid Transit)は、日本の新交通システムに相当するもので、東京の臨海副都心を走る「ゆりかもめ」と同じ無人運転で、MRTの支線のような役割をしている(写真1参照)。

郊外のMRT駅には、バスターミナルやパーク&ライド施設(写真2参照)も整備されており、乗り継ぎもしやすい。都心部では、バス専用レーンが設けられ、バスの優先信号システム(B-signalという)、バスロケーションシステム(バスの近接表示)など、ITを活用したサービスの導入は、日本と遜色ないレベルにある。

利用料金は、鉄道、バスも低いが、初乗り170円というタクシー料金は特筆ものだ。自家用車が高価なこともあり、タクシー料金は、政策的に低く抑えられているようだ。

タクシーは、日本に見られるような“流し”はほとんど見かけない。タクシーの待機場所と配車システムを整備すれば、日本でも、燃料を無駄使いする“流し”のタクシーを減らすことができると思う。

◆4. 道路利用の需要管理

需要管理で最も有名なのが、前々回紹介したロードプライシング(RP)だ。また、自動車の台数も、政府が1年間に購入できる新車台数を定め、購入希望者はオークションで落札する方法がとられ、保有台数は政府の管理下にある。落札額は下落傾向にあるものの、税金なども含めると、200万円のクルマが600万円ほどになってしまう。

近年、シンガポール政府は、保有管理を緩め、RPなど走行段階での需要管理を重視する方向にある。クルマは使わない限り、渋滞にもならないし、CO2を出さないからだろう。
しかし、シンガポールの自動車保有台数は75万台(2005年)であり、人口あたりの自動車保有率は0.17台、保有率は、東京23区の半分程度のレベルに留まっている。シンガポールは、自動車の需要管理が厳格なことには変わりはない。

《伊東大厚》

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