昨年5月、大阪府大阪市住吉区内で飲酒運転を原因とする軽傷ひき逃げ事故を起こしたとして、業務上過失や道路交通法違反の罪に問われた35歳の男に対する判決公判が11日、大阪地裁で行われた。裁判所はひき逃げについては罰金刑を命じたが、飲酒運転の部分については無罪とした。
問題の事件は2006年5月3日未明に発生している。大阪市住吉区内の市道で信号待ちをしていた乗用車に対し、後ろから走ってきた普通トラックが追突した。乗用車を運転していた男性は頚部打撲の軽傷を負ったが、トラックはその場から逃走した。
警察では事故から約5時間30分後に出頭してきた35歳の男を容疑者として検挙。出頭時に行われた呼気検査では酒気帯び相当量以下のアルコール分だったが、事故の数時間前まで知人と酒を飲んでいたことが判明。警察では「ウィドマーク法」という計算式を用い、事故当時の推定アルコール量を計算。酒気帯び状態で事故を起こしたと結論付けた。
当初、男は「知人と2人でビール中瓶(500ml)を5-6本飲んだ」と供述していたが、検察は「2人で7本飲み、男はこのうち4本半を飲んだ」として、業務上過失傷害と道交法違反の罪で起訴していた。ウィドマーク法を用いて計算した場合、男が酒気帯び状態とされるにはビール2115mlを飲んでいる必要があり、4本半であればこれをクリアしていた。これに対して被告側は「合計7本という本数は、結果があることを前提に捜査段階で誘導されたものだ」と主張していた。
11日に行われた判決公判で、大阪地裁の内田貴文裁判官は「警察の調書では5-6本となっていた被告の飲酒量を巡る供述が、検察の調書では7本になった」と指摘。「検察側に誘導された可能性がある」として、被告側の主張を容認した。その上で「被告が実際に飲んだ本数は3-3.5本程度だった」と認定。ウィドマーク法を用いた事故当時の推定アルコール濃度は0.042ミリグラムとした。
このため裁判官は「飲酒運転については裏付けが不十分」として無罪に。業務上過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)については責任を認め、罰金20万円とする有罪判決を言い渡している。
事故当時のアルコール量をウィドマーク法で算出し、飲酒運転として起訴したケースは他にも数件あるという。今回の判断がこれらの公判に影響を与える可能性は高く、今後に注目したい。