ホンダ『フィット』プロトタイプ。走り出してすぐに感じるのはステアリングフィールのよさ。左右に操舵したときの反応は滑らかだし、速度を上げていくほど落ち着きが増していく。モーターを容量アップした電動パワーステアリング、キャスター角とトレール量を増やしたフロントサスペンションの効果を早速体験できたというわけだ。
現行モデルではとくにリアが突っ張る印象のあったサスペンションも、格段に動きがしなやかになった。形式こそ同じトーションビーム式だがリアサスペンションも新設計とされ、長く確保したアーム長や新しいジオメトリーによって、接地感と乗り心地をともに向上させている。
しかし、それらもすべては優れた土台あってこそ。剛性が飛躍的に高められたボディこそが、このポテンシャルの高い走りの最大のポイントだろう。
ボディ設計を担当した原田俊幸さんは「じつはホワイトボディの重量は現行モデルとまったく変わりません。部材を足すのではなく、主にこれまで分割されていたサブフレームの一体化やBピラーとサイドシルの結合効率向上、サイドフレームの大開口・肉薄化といった形状変更によってボディ剛性を向上させたのです。」と話す。
「まさに『何も足さない、何も引かない』ですよ。車重は10kg増えていますが、これはトルクコンバーターと拡大したガラス面積の分ですね。」というのは人見LPLである。
走りの軽快感、安定性、そして乗り心地の面でもっともバランスのよい走りを見せたのは1.3リットルの15インチタイヤ装着車。人見LPLも、これが性能訴求モデルであると認める。1.5リットルエンジンを積むRSも、適度に引き締められ正確性を増したフットワークと高回転域で伸びる心地よいエンジン特性が相まってさらに楽しめる1台に仕上がっている。
まとめればフィット・プロトタイプの走りは、開発コンセプトの通り、あらゆる面で進化を果たし、ひとクラス上のクルマのような印象をもたらすほど成熟したものに仕上がっているといえそうだ。