【伊東大厚のトラフィック計量学】どうすれば重篤患者を優先できるか…救急と事故 その3

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【伊東大厚のトラフィック計量学】どうすれば重篤患者を優先できるか…救急と事故 その3
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高齢化の影響などで救急ニーズは増加の一途を辿っており、救急サービスを提供する側は既に限界に近い状況にある。真に救急搬送が必要な重篤患者を優先するには、どうすれば良いのだろうか。

◆救急搬送トリアージの取組み

東京消防庁では、緊急性の高い重篤患者の救急を優先するため、今年6月から救急搬送トリアージの試行とともに、救急相談センターの運用開始や民間救急の活用を始めた(図1)。

トリアージは治療優先順位の決める仕組みのことだ。現在試行されている救急搬送トリアージでは、119番通報で救急隊が従来どおり出動し、現場で緊急性がないと判断され同意が得られた場合のみ救急車での搬送はしないというもので、現在のところ順調に進んでいるようだ。

◆搬送者の半数以上は「軽症」だが…

年間500万人近い救急搬送者のうち、半数以上は入院の必要のない「軽症」と診断される(図2)。しかし、119番通報時には重症か軽症かの判断ができず、どの病院に行けばよいかもわからない、といった通報者側の事情がある。

公共サービスといっても、その資源は有限だ。119番は通報があると必ず出動するが、通報者全てに対する出動は考え直す時期に来ていると思う。救急搬送者の6割を占める「急病」の場合でも、アドバイスや病院の紹介などがあれば救急搬送は必要ないというケースも少なくない。

緊急通報に対し、的確なアドバイスや救急隊の出動可否を判断と民間救急を充実させることができれば、救急隊の出動を抑制することは可能だろう。

◆通報段階でのトリアージと官民協働

通報段階でのトリアージは、既に海外の導入事例があり我が国でも検討されているが、重篤患者の救急を優先させる有力な手段だと思う。例えば、119番は一旦「救急コール」として一括受信し必要に応じ救急隊を要請する仕組みとすれば、救急隊の出動抑制のみならず、救急車をタクシーがわりに使う不心得者の排除につながるはずだ。

「通報トリアージ」と似た仕組みが、民間の緊急通報サービス“HELPNET”の通報システムにある。HELPNETの年間緊急通報受信数は約1万2000件だが、警察・消防やロードサービス要請など公共機関に接続されたのは1割程度であり、9割はオペレータ処理で済んでいる(図3)。

こうした仕組みは、通報トリアージの一翼を担い、将来、官民協働による救急サービス充実に発展する可能性もあると思う。

《伊東大厚》

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